「労働基準法の規定」による災害補償に対する所得税の非課税規定

規定

労働基準法の災害補償規定に基づき、会社から従業員に支払が行われるものには、以下の補償があります。
これらの災害補償に対する所得税の取り扱いは、以下のように規定されています。

 労働基準法の災害補償規定により受ける以下の給付については、所得税が非課税となります。

  • 休業補償
  • 打切補償
  また、勤務先の就業規則に基づき、休業補償に定める割合(療養中平均賃金の100分の60)を超えて支給される「付加給付金」についても、所得税が非課税となります。

 

規定の留意点

1.上記の災害補償は、労災保険の認定を前提として支給される補償給付です。

2.労災保険の認定がなく、単に、会社の就業規則等に基づき支給されるような給付は、「給与」として扱われます。

3.「付加給付金」についても、労災保険の認定を前提として支給されるものです。
「付加給付金」については、労働基準法に規定された「法定給付」ではないのですが、その「付加給付金の額」と「法定給付金」との合計額が、「通常支給されるべき賃金の範囲内」である等の場合には、労働基準法上の給付では補てんされない部分に対応する民法上の損害賠償に相当するものである等の理由から、非課税として明記しています。

4.上記の災害補償については、所得税が非課税となりますので、会社での源泉徴収は必要ありません。

 

休業補償、打切補償、付加給付金

休業補償、打切補償、付加給付について、以下でご説明いたします。

【休業補償】

・労働者が、業務上又は通勤による負傷や疾病による療養のため労働することができず、そのために賃金を受けていないとき、労働基準監督署に請求書送付し、労災認定がなされた場合、休業開始の日から数えて第4日目から休業補償が支給されます。
(請求の際には、「事業主の証明書」「医療機関の証明書」が必要となります。)

・休業のはじめの3日間は「待期期間」といいます。この「待機期間」については、国からの休業補償は支給されません。
ただし、業務災害による休業の場合は、この「待機期間」に対して、事業主が労働基準法の定めるところにより、「平均賃金の60%」の「休業補償」を従業員に支払う義務が生じます。

【打切補償】

・労災により休業している労働者に対する解雇は、原則として禁止されています。

・この例外として、「第75条の規定によって補償を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病が治らない場合においては、事業主は、平均賃金の1,200日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。」という規定が存在します。この事業主から従業員への補償を「打切補償」といいます。

【付加給付金】

・労働災害の発生に備え、「休業補償」等の「労災保険法による法定給付」に加えて、独自の上積みを図るための「法定外補償制度」を設けている会社があります。

・この法定外補償のことを「付加給付金」といいます。

 

 

休業手当に対する所得税の課税

規定

 使用者の責に帰すべき事由により休業した場合に支給される「休業手当」は、「給与」となり、所得税が課税されます。

【留意事項】

・「休業手当」についても、労働基準法に規定があるものです。
これについては、「休業補償」とは異なり、所得税が課税されますので、注意が必要となります。

・このため、「休業手当」に対しては、会社に源泉徴収義務が生じます。

 

休業手当と休業補償

「休業手当」と「休業補償」は、名称が似ていますが、その内容は全く異なるものになります。

【休業手当】

・事業主の責任による理由(操業調整、原料不足、機械の故障、検査など)で、従業員が休業した場合においては、労働基準法26条の規定に基づき、使用者は、休業期間中に当該労働者に、その従業員の「平均賃金の60%以上の金額」を支払わなければなりません。この場合の使用者から従業員への支給のことを「休業手当」と言います。

・この手当は、所得税法では、「給与」として扱われます。

【休業手当と休業補償】

・「休業手当」は、事業主の都合により、従業員に給与が支払われない場合に、給与の代替として、事業主に支払を義務づけたものですので、その支給額は、「給与」として扱われます。

・他方、「休業補償」は、業務災害等により休業せざるを得ない労働者の生活を維持する必要から、事業主に支払を義務付けたものですので、その支給額は、「一種の賠償金」として扱われるために、「給与」とはみなされません。

 

 

解雇予告手当

規定

 使用者が労働基準法第20条(解雇の予告)の規定による予告をしないで使用人を解雇する場合に、その使用者から支払われる「解雇予告手当」は、「退職手当」とされます。

【留意事項】

・解雇予告手当は、「給与」ではなく、「退職手当」として扱われます。

・このため、会社の源泉徴収は、「給与」として行うのではなく、「退職所得」としての源泉徴収が必要となります。

 

解雇予告手当

・使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をする必要があります。

・上記の日数の余裕をもって解雇しない場合には、「30日分以上の平均賃金」を従業員に支払う必要が生じます。
この支給金を「解雇予告手当」といいます。