事業税の課税所得計算上の取り扱い

事業税は、法人税や住民税とは違い、課税所得計算上、支払時において損金算入することができます。

また、事業税の還付があった場合には、課税所得計算上、還付時において益金算入しなくてはなりません。

このために、事業税については、下記の場面がある場合には、課税所得計算上(別表4への記載にあたって)どのように処理するかを考える必要があります。

【法人税申告書 別表4への記載が必要な場面】

  1. 当期の事業税の年額を計算した場合
  2. 当期の事業税の中間納付があった場合
  3. 過年度の確定事業税の未払分の支払があった場合
  4. 過年度の事業税の還付があった場合

 

別表4への記載が必要な場面の場合分け

1、場合分け

上記の別表4への記載が必要な場面は以下のように分類できます。

Ⅰ、別表4が税引後利益からスタートしていることから、別表4への記載が必要となるもの
⇒これは、課税所得計算の加算・減算には直接的には関係しません。単に、別表4が税引後利益からスタートしているために、別表4への記載が必要となるものです。

Ⅱ、租税の支払金額又は還付金を、支払時又は還付時に損金又は益金に算入する必要があるために別表4に記載が必要となるもの

 

2、各場面の場合分けへのあてはめ

各場面を上記1の場合分けにあてはめると以下ののうになります。

 Ⅰ、別表4が税引後利益からスタートしていることから、別表4への記載が必要となるもの
  • 「当期の事業税の年額を計算した場合」がこれに該当します。
 Ⅱ、租税の支払金額又は還付金を、支払時又は還付時に損金又は益金に算入する必要があるために別表4に記載が必要となるもの
  • 「当期の事業税の中間納付があった場合」がこれに該当します。
  • 「過年度の確定事業税の未払分の支払があった場合」がこれに該当します。
  • 「過年度の事業税の還付があった場合」がこれに該当します。

 

各場面の会計処理

別表4への記載方法を考える前に、それぞれの場合での会計処理(損益計算書上の仕訳)を整理しておくことが必要だと思いますので、下記で整理します。

1、別表4が税引後利益からスタートしていることから、別表4への記載が必要となるもの

【前提】

この場合の損益計算書上の仕訳は、通常、法人税や住民税と同様に「年間の確定金額」を「法人税、住民税及び事業税」勘定で処理します。

【仕訳】

(借方)                       (貸方)
法人税、住民税及び事業税 ○○○円(年間確定額)  / 未払法人税等  ○○○円

 

2、租税の支払金額又は還付金を、支払時又は還付時に損金又は益金に算入する必要があるために別表4に記載が必要となるもの

【前提】

この場合には、通常、下記の2通りの仕訳が考えられます。

①支払時や還付時に「未払法人税等」を使用する方法。
⇒この場合には、損益計算書への影響はありません。

②支払時や還付時に「租税公課」勘定を使用する方法。
⇒この場合には、損益計算書上、費用処理又は収益処理(費用のマイナス)されます。
⇒このため、損益計算書における当期利益が、支払金額又は還付金額だけ増減します。

【①の仕訳】

1)当期の事業税の中間納付時

未払法人税等   ○○円     /  現金   ○○円
(仮払法人税等)

2)過年度の確定事業税の未払分の支払時

未払法人税等       ○○円     /  現金  ○○円

3)過年度の事業税の還付

現金    ○○円     /  未払法人税等   ○○円
’              (未収金又は仮払法人税等)

【②の仕訳】

1)当期の事業税の中間納付時

租税公課   ○○円     /  現金   ○○円

2)過年度の確定事業税の未払分の支払時

租税公課       ○○円     /  現金  ○○円

3)過年度の事業税の還付

現金    ○○円     /  租税公課   ○○円
’               (雑収入)

 

【2通りの仕訳がある理由】

なぜ、この場合には、上記のような2通りの処理が考えられるのでしょうか?
通常、法人税や住民税の会計処理(仕訳)では、①の仕訳方法で処理することが通常だと思います。では、事業税だけなぜ支払時や還付時に②の仕訳も使われるのか?
それは、事業税の支払時や還付時には、その金額が損金算入や益金算入されることと関係しています。

②の仕訳方法が存在するのは、
事業税の支払金額や還付金額は課税所得計算上、損金や益金に算入されるため、これらを損益計算書作成の段階で費用や収益に取り込んでしまうことを前提としているためなのです。

すなわち
①の処理(仕訳)を行う場合には、「損益計算書で計算された当期利益」に、「事業税の支払金額」や「事業税の還付金額」が費用や収益に入っていないため、別途課税所得計算を行う場合に、別表4で、これらの金額を加算・減算する必要があります。

他方②の処理(仕訳)を行う場合には、「損益計算書で計算された当期利益」に、「事業税の支払金額」や「事業税の還付金額」が費用や収益として計上済みであるため、別途課税所得計算を行う場合に、別表4で、これらの金額を加算・減算することは必要ありません。

 

【各仕訳と別表4の記載との関係】

①の処理(仕訳)をおこなった場合
損益計算書の当期利益には、「事業税の支払金額」や「事業税の還付金額」が費用や収益に入っていません。

ただし、課税所得計算上、これらは損金、益金に算入することができます。

ここで、課税所得計算は、損益計算書の「当期利益又は損失」を計算のスタートとしています。

このため、課税所得計算を別表4で行う際に下記の加算・減算が別途必要になります。

  • 当期の事業税の中間納付金額を課税所得計算上「損金」として減算する。
  •  過年度の確定事業税の未払分の支払金額を課税所得計算上「損金」として減算する。
  • 過年度の事業税の還付金を課税所得計算上「益金」として加算する。

②の処理(仕訳)をおこなった場合
損益計算書の当期利益には、「事業税の支払金額」や「事業税の還付金額」が費用や収益に入っています。

損益計算書の「当期利益又は損失」を計算のスタートとする課税所得計算においても、これらの金額は別途減算・加算をしなくとも、減算・加算がなされています。

このため、課税所得計算を別表4で行う際には、別途の加算・減算は行う必要がないのです。

 

 

各場面における課税所得計算及び別表4の記載のための前提知識

以下2点のご確認をお願い致します。

1、課税所得計算上、事業税の処理が必要な場面

①別表4が税引後利益からスタートしていることから、別表4への記載が必要となるもの

・当期の事業税の年額

②租税の支払金額又は還付金を、支払時又は還付時に損金又は益金に算入する必要があるために別表4に記載が必要となるもの

・当期の事業税の中間納付の金額
・過年度の確定事業税の未払分の支払金額
・過年度の事業税の還付金額

 

2、それぞれの場面での会計処理

①の場合の仕訳:通常1通りの仕訳方法で帳簿記帳します。

②の場合の仕訳:「損益計算書を通さない仕訳」と「損益計算書を通す仕訳方法」のいずれかで帳簿記帳します

 

「別表4が税引後利益からスタートしていることから、別表4への記載が必要となるもの」の「課税所得計算への影響」と「別表4への記載」

 

上記場合に該当するもの

・事業税の年税額

 

会計帳簿での仕訳方法

法人税、住民税及び事業税 ○○○円   /  未払法人税等 ○○○円

 

課税所得への影響

「事業税の当期年間税額」につきましては、「当期の課税所得計算」においては、損金に算入されることはないため、本来課税所得計算にあたっては、加算も減算もされません。

ただ、「法人税申告書別表4」においては、課税所得計算が「税引後当期利益」をスタートとしているために、これを「税引前利益」に組み替える目的で、「別表4の課税所得計算」で特別に加算されます。

 

別表4への記載

「法人税、住民税及び事業税」の年間発生額をまとめて、「損金の額に算入した納税充当金」に記載して加算します。

 

 

 

「租税の支払金額又は還付金を、支払時又は還付時に損金又は益金に算入する必要があるために別表4に記載が必要となるもの」で、会計帳簿で未払・未収処理をした場合の「課税所得計算への影響」と「別表4への記載」

 

上記場合に該当するもの

・当期の事業税の中間納付の金額
・過年度の確定事業税の未払分の支払金額
・過年度の事業税の還付金額

 

会計帳簿での仕訳方法

1)当期の事業税の中間納付時

未払法人税等   ○○円     /  現金   ○○円
(仮払法人税等)※

2)過年度の確定事業税の未払分の支払時

未払法人税等       ○○円     /  現金  ○○円

3)過年度の事業税の還付

現金    ○○円     /  未払法人税等   ○○円
’              (未収金又は仮払法人税等)※

※上記を「未払法人税等(負債)」勘定ですべてを包括し、会計帳簿上でNETするか、「未収金又は仮払金勘定(資産)」を別に計上し、会計帳簿上でグロス処理するのかの違いだけです。
この違いにより別表5(2)の記載が異なってきますが、別表4の記載には、どちらの処理を行っても結果に相違はでません。(加減算の名称が異なるのみです。)

 

課税所得への影響

「損益計算書(会計帳簿)で計算された当期利益」に、「事業税の支払金額」や「事業税の還付金額」が費用や収益に入っていないため、別途、課税所得計算を行う場合に、別表4で、これらの金額を加算・減算する必要があります。

 

具体的な計算例示による別表4の記載

①-1事業税の中間納付の金額(未払法人税で処理した場合)

【前提】

・事業税中間納付金額 :500,000円
・税引前当期純利益  :10,100,000円
・加算金額      :500,000円
・減算金額      :600,000円(事業税の中間納付以外のもの)

(事業税の中間納付時の会計帳簿での仕訳)
未払法人税等  500,000円   /  現金 500,000円

【課税所得計算】

事業税の中間納付分は、「未払法人税等(負債)」勘定で処理しているために、上記の税引前当期純利益10,100,000円の中には含まれていません。
このため、別表4を作成する際に、課税所得計算上、事業税中間納付金額500,000円を損金算入する必要があります。

税引前当期純利益 :10,100,000円
事業税中間納付  :△500,000円
加算金額     :500,000円
減算金額     :△600,000円 ’
課税所得金額   :9,500,000円

【法人税額計算前の別表4】

・当期利益:10,100,000円を記載します。
・減算項目の「納税充当金から支出した事業税等の金額」に500,000円を記載します。
・これ以外には加算金額に500,000円、減算金額に600,000円が入っています。
・課税所得9,500,000円となりますので、これで税額を計算します。

別表4(3)

別表4(4)

【法人税計算】

課税所得9,500,000円で法人税の計算を行います。

法人税  :1,740,700円
住民税  : 343,600円
事業税  : 628,900円  ’
法人税等 : 2,713,200円

損益計算書の記載】

税引前当期純利益 :10,100,000円
法人税等     : 2,713,200円
税引後利益    :7,386,800円

【別表4の記載】

・「当期利益又は当期損失」を7,386,800円とします。
・「「損金の額に算入した納税充当金」を2,713,200円とします。
⇒課税所得は、9,500,000円のまま、変わりません。

別表4(5)

別表4(6)

①-2事業税の中間納付の金額(仮払法人税で処理した場合)

【前提】

・事業税中間納付金額 :500,000円
・税引前当期純利益  :10,100,000円
・加算金額      :500,000円
・減算金額      :600,000円(事業税の中間納付以外のもの)

(事業税の中間納付時の会計帳簿での仕訳)
仮払法人税等  500,000円   /  現金 500,000円

【課税所得計算】

事業税の中間納付分は、「仮払法人税等(資産)」勘定で処理しているために、上記の税引前当期純利益10,100,000円の中には含まれていません。
このため、別表4を作成する際に、課税所得計算上、事業税中間納付金額500,000円を損金算入する必要があります。

税引前当期純利益 :10,100,000円
事業税中間納付  :△500,000円
加算金額     :500,000円
減算金額     :△600,000円 ’
課税所得金額   :9,500,000円

【法人税額計算前の別表4】

・当期利益:10,100,000円を記載します。
・減算項目の「仮払税金認定損」に500,000円を記載します。
・これ以外には加算金額に500,000円、減算金額に600,000円が入っています。
・課税所得9,500,000円となりますので、これで税額を計算します。

別表4(7)

別表4(8)

【法人税計算】

課税所得9,500,000円で法人税の計算を行います。

法人税  :1,740,700円
住民税  : 343,600円
事業税  : 628,900円  ’
法人税等 : 2,713,200円

損益計算書の記載】

税引前当期純利益 :10,100,000円
法人税等     : 2,713,200円
税引後利益    :7,386,800円

【別表4の記載】

・「当期利益又は当期損失」を7,386,800円とします。
・「損金の額に算入した納税充当金」を2,713,200円とします。
⇒課税所得は、9,500,000円のまま、変わりません。

別表4(5)

別表4(6)

②過年度の確定事業税の未払分の支払金額

【前提】

・前期未払事業税の確定納付金額 :500,000円
・税引前当期純利益       :10,100,000円
・加算金額           :500,000円
・減算金額           :600,000円(未払事業税の確定納付以外のもの)

(事業税の確定納付時の会計帳簿での仕訳)
未払法人税等  500,000円   /  現金 500,000円

【課税所得計算】

事業税の確定納付分は、「未払法人税等(負債)」勘定で処理しているために、上記の税引前当期純利益10,100,000円の中には含まれていません。
このため、別表4を作成する際に、課税所得計算上、事業税確定納付金額500,000円を損金算入する必要があります。

税引前当期純利益 :10,100,000円
事業税確定納付  :△500,000円
加算金額     :500,000円
減算金額     :△600,000円 ’
課税所得金額   :9,500,000円

【法人税額計算前の別表4】

・当期利益:10,100,000円を記載します。
・減算項目の「納税充当金から支出した事業税等の金額」に500,000円を記載します。
・これ以外には加算金額に500,000円、減算金額に600,000円が入っています。
・課税所得9,500,000円となりますので、これで税額を計算します。

別表4(7)

別表4(9)

【法人税計算】

課税所得9,500,000円で法人税の計算を行います。

法人税  :1,740,700円
住民税  : 343,600円
事業税  : 628,900円  ’
法人税等 : 2,713,200円

損益計算書の記載】

税引前当期純利益 :10,100,000円
法人税等     : 2,713,200円
税引後利益    :7,386,800円

【別表4の記載】

・「当期利益又は当期損失」を7,386,800円とします。
・「「損金の額に算入した納税充当金」を2,713,200円とします。
⇒課税所得は、9,500,000円のまま、変わりません。

別表4(5)

別表4(6)

③-1過年度の事業税の還付金

【前提】

・過年度事業税の還付金額 :500,000円
・税引前当期純利益    :10,100,000円
・加算金額        :500,000円(過年度の還付金額は含まない)
・減算金額        :600,000円

(事業税の還付時の会計帳簿での仕訳)
現金  500,000円   /  未払法人税等 500,000円

【課税所得計算】

・事業税の還付金を、「未払法人税等(負債)」勘定で処理しているために、上記の税引前当期純利益10,100,000円の中には含まれていません。
⇒前期に未収金勘定で処理していたか?未払法人税等で処理していたか?は別表上では関係ありません。ここでは、当期に還付を受けた時点で、会計帳簿にどの勘定で処理したかが大切になります。
⇒仮に、前期に未収金勘定で処理していたなら、会計帳簿上で、未収金と未払法人税等をNET処理すれば問題ないです。
・このため、別表4を作成する際に、課税所得計算上、事業税還付金額500,000円を益金算入する必要があります。

税引前当期純利益 :10,100,000円
事業税還付金額  :500,000円
加算金額     :500,000円
減算金額     :△600,000円 ’
課税所得金額   :10,500,000円

【法人税額計算前の別表4】

・当期利益:10,100,000円を記載します。
・減算項目の「納税充当金から支出した事業税等の金額」に△500,000円を記載します。
・これ以外には加算金額に500,000円、減算金額に600,000円が入っています。
・課税所得10,500,000円となりますので、これで税額を計算します。

別表4(7)

別表4(10)

別表4(11)

【法人税計算】

課税所得10,500,000円で法人税の計算を行います。

法人税  :2,021,200円
住民税  : 387,800円
事業税  : 724,900円  ’
法人税等 :3,133,900円

損益計算書の記載】

税引前当期純利益 :10,100,000円
法人税等     : 3,133,900円
税引後利益    :6,966,100円

【別表4の記載】

・「当期利益又は当期損失」を6,966,100円とします。
・「「損金の額に算入した納税充当金」を3,133,900円とします。
⇒課税所得は、10,500,000円のまま、変わりません。

別表4(12)

別表4(13)

③-2過年度の事業税の還付金

【前提】

・過年度事業税の還付金額 :500,000円
・税引前当期純利益    :10,100,000円
・加算金額        :500,000円(過年度の還付金額は含まない)
・減算金額        :600,000円

(事業税の還付時の会計帳簿での仕訳)
現金  500,000円   /  未収法人税等 500,000円

【課税所得計算】

・事業税の還付金を、「未収法人税等(資産)」勘定で処理しているために、上記の税引前当期純利益10,100,000円の中には含まれていません。
・このため、別表4を作成する際に、課税所得計算上、事業税還付金額500,000円を益金算入する必要があります。

税引前当期純利益 :10,100,000円
事業税還付金額  :500,000円
加算金額     :500,000円
減算金額     :△600,000円 ’
課税所得金額   :10,500,000円

【法人税額計算前の別表4】

・当期利益:10,100,000円を記載します。
・加算項目の「仮払税金還付額」に500,000円を記載します。
・これ以外には加算金額に500,000円、減算金額に600,000円が入っています。
・課税所得10,500,000円となりますので、これで税額を計算します。

別表4(14)

別表4(11)

【法人税計算】

課税所得10,500,000円で法人税の計算を行います。

法人税  :2,021,200円
住民税  : 387,800円
事業税  : 724,900円  ’
法人税等 :3,133,900円

損益計算書の記載】

税引前当期純利益 :10,100,000円
法人税等     : 3,133,900円
税引後利益    :6,966,100円

【別表4の記載】

・「当期利益又は当期損失」を6,966,100円とします。
・「「損金の額に算入した納税充当金」を3,133,900円とします。
⇒課税所得は、10,500,000円のまま、変わりません。

別表4(12)

別表4(13)

 

「租税の支払金額又は還付金を、支払時又は還付時に損金又は益金に算入する必要があるために別表4に記載が必要となるもの」で、会計帳簿で支払時や還付時に「租税公課」勘定で処理をした場合の「課税所得計算への影響」と「別表4への記載」

 

上記場合に該当するもの

・当期の事業税の中間納付の金額
・過年度の確定事業税の未払分の支払金額
・過年度の事業税の還付金額

 

会計帳簿での仕訳方法

1)当期の事業税の中間納付時

租税公課   ○○円     /  現金   ○○円
2)過年度の確定事業税の未払分の支払時

租税公課       ○○円     /  現金  ○○円

3)過年度の事業税の還付

現金    ○○円     /  租税公課   ○○円
’                (雑収益)

 

課税所得への影響

「事業税の支払金額」や「事業税の還付金額」は、その支払時や還付時に課税所得計算上、損金や益金に算入することができます。
このために、これらを損益計算書を作成する段階で、費用収益取り込んでしまう処理があります。
それを行う会計記帳が上記の会計処理となります。

この場合には、「損益計算書(会計帳簿)で計算された当期利益」に、「事業税の支払金額」や「事業税の還付金額」が費用や収益としてすでに入っていますので、別途、課税所得計算を行う場合に、別表4で、これらの金額を加算・減算する必要はありません。

 

具体的な計算例示による別表4の記載

①事業税の中間納付の金額

【前提】

・事業税中間納付金額 :500,000円
・税引前当期純利益  :10,100,000円
・加算金額      :500,000円
・減算金額      :600,000円(事業税の中間納付以外のもの)

(事業税の中間納付時の会計帳簿での仕訳)
租税公課  500,000円   /  現金 500,000円

【課税所得計算】

事業税の中間納付分は、「租税公課(費用)」勘定で処理しているために、上記の税引前当期純利益10,100,000円の中に既に含まれています。
このため、別表4を作成する際に、課税所得計算上、事業税中間納付金額500,000円を損金算入する必要はありません。

税引前当期純利益 :10,100,000円
加算金額     :500,000円
減算金額     :△600,000円 ’
課税所得金額   :10,000,000円

・当期利益:10,100,000円を記載します。
・これ以外には加算金額に500,000円、減算金額に600,000円が入っています。
・課税所得10,000,000円となりますので、これで税額を計算します。

別表4(16)

【法人税等の金額の計算】

課税所得10,000,000円で法人税の計算を行います。
その結果は、以下のようになります。

法人税  :1,881,000円
住民税  : 365,800円
事業税  : 676,900円
法人税等: 2,923,700円

【損益計算書の記載】

税引前当期純利益 :10,100,000円
法人税等     : 2,923,700円
税引後利益    :7,176,300円

 【別表4への記載】

・「当期利益又は当期損失」を7,176,300円とします。
・「損金の額に算入した納税充当金」を2,923,700円とします。
別表4

別表4(16)

 

②過年度の確定事業税の未払分の支払金額

【前提】

・前期未払事業税の確定納付金額 :500,000円
・税引前当期純利益       :10,100,000円
・加算金額           :500,000円
・減算金額           :600,000円(未払事業税の確定納付以外のもの)

(事業税の確定納付時の会計帳簿での仕訳)
租税公課  500,000円   /  現金 500,000円

【課税所得計算】

事業税の確定納付分は、「租税公課(費用)」勘定で処理しているために、上記の税引前当期純利益10,100,000円の中に既に含まれています。
このため、別表4を作成する際に、課税所得計算上、事業税確定納付金額500,000円を損金算入する必要はありません。

税引前当期純利益 :10,100,000円
加算金額     :500,000円
減算金額     :△600,000円 ’
課税所得金額   :10,000,000円

・当期利益:10,100,000円を記載します。
・これ以外には加算金額に500,000円、減算金額に600,000円が入っています。
・課税所得10,000,000円となりますので、これで税額を計算します。

別表4(16)

【法人税等の金額の計算】

課税所得10,000,000円で法人税の計算を行います。
その結果は、以下のようになります。

法人税  :1,881,000円
住民税  : 365,800円
事業税  : 676,900円
法人税等: 2,923,700円

【損益計算書の記載】

税引前当期純利益 :10,100,000円
法人税等     : 2,923,700円
税引後利益    :7,176,300円

 【別表4への記載】

・「当期利益又は当期損失」を7,176,300円とします。
・「損金の額に算入した納税充当金」を2,923,700円とします。

別表4

別表4(16)

 

③過年度の事業税の還付金

【前提】

・過年度事業税の還付金額 :500,000円
・税引前当期純利益    :10,100,000円
・加算金額        :500,000円(過年度の還付金額は含まない)
・減算金額        :600,000円

(事業税の還付時の会計帳簿での仕訳)
現金  500,000円   /  租税公課 500,000円

【課税所得計算】

事業税の確定納付分は、「租税公課(費用)」又は「雑収益(収益)」勘定で処理しているために、上記の税引前当期純利益10,100,000円の中に既に含まれています。
このため、別表4を作成する際に、課税所得計算上、事業税還付金額500,000円を益金算入する必要はありません。

税引前当期純利益 :10,100,000円
加算金額     :500,000円
減算金額     :△600,000円 ’
課税所得金額   :10,000,000円

・当期利益:10,100,000円を記載します。
・これ以外には加算金額に500,000円、減算金額に600,000円が入っています。
・課税所得10,000,000円となりますので、これで税額を計算します。

別表4(16)

【法人税等の金額の計算】

課税所得10,000,000円で法人税の計算を行います。
その結果は、以下のようになります。

法人税  :1,881,000円
住民税  : 365,800円
事業税  : 676,900円
法人税等: 2,923,700円

【損益計算書の記載】

税引前当期純利益 :10,100,000円
法人税等     : 2,923,700円
税引後利益    :7,176,300円

 【別表4への記載】

・「当期利益又は当期損失」を7,176,300円とします。
・「損金の額に算入した納税充当金」を2,923,700円とします。

別表4
別表4(16)