社長や役員には労災保険がないって聞いたけど本当?

質問日:2009/04/25
中小企業の経営者です。従業員が30人程います。経営者である私は、労災保険
には入らないと聞いたのですが、何とかならないものなのでしょうか?

原則:経営者は労災保険には入れませんが・・・

回答日:2009/05/21


★労災保険の中身、ご存知ですか?

法人の経営者は原則的として労災保険には加入できません。 ご存知でしたか? (中小事業主、法人の役員、家族従事者等もそうです!) って考えると、経営者が労災に遭った場合には、保険適用は 全くないということでしょうか? 結論から言うと、そんなことはありません。 ●個人事業の場合 国民健康保険が適用されます。 国民健康保険は、「被保険者の疾病、負傷…」に対して保険給付を行う という規定になっています。つまり、原因が労災であろうと私傷病で あろうと、どっちであっても保険の対象となるわけです。 ●法人の経営者の場合です。 法人の経営者は、健康保険に加入していますよね。 でも、健康保険は「私傷病」に対して保険を給付する制度なんです。 つまり、労災による負傷や病気は対象外となるんですね。 ちなみに、会社にお勤めのサラリーマンの方は、 私傷病は健康保険、労災は労災保険でカバーされます。 つまりです。 サラリーマンの場合は、異なる2つの保険制度によって 仕事・プライベートの両方の分野がうまくフォローできてるんですね。

★中小企業経営者は特別に労災保険に加入できる!

中小企業事業主などには労災保険に特別に加入できる制度(特別加入制度) が設けられています。  

●特別加入できる「中小事業主」の要件

  ◆金融、保険、不動産、小売業、サービス業:従業員50人以下   ◆卸売業:従業員100人以下   ◆その他の事業:従業員300人以下   ◆労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託している者  

●特別加入のためのその他の要件【従業員がいる場合】

  ◆その会社自体が労災保険の適用事業所である必要があります。    (自分一人だけの会社の場合は特別加入は無理なんです!)      ◆労災保険の加入を希望する特別加入者は、労働保険事務組合等に    労働保険事務の処理を委託し、特別加入申請手続きを労働保険事務組合等が行い、    都道府県労働局長の承認を得る必要があります。       

●中小事業主等の特別加入の対象者

  ◆法人の代表者   ◆法人の代表者以外の役員(雇用保険に加入している等、労働者扱いの人を除く)   ◆個人事業主(従業員を使用している場合に限る)   ◆個人事業主の家族で、当該事業に従事している方   ◆一人親方(一部)   ◆海外派遣者(通常労災保険は国内適用のみ)      <注意>   特別加入する際は、特別加入の対象となる方を全員が加入する必要アリ!   但し、事業に従事していない役員等は、加入する必要はありません。   労災保険の特別加入は、中小企業経営者にとっては有難い制度ですが、   健康保険の穴を完全にカバーしてくれるわけではないんです。   (もともと労働者保護の制度なので、経営者用としては不十分な点があります)   一人親方等の特別加入は、中小事業主と違って労働者がいないので保険関係は成立   していません。一人親方等は、その人が加入している団体を適用事業とし、   その人を団体に使用される労働者とみなして、団体ごとに特別加入することになります。   尚、労働事務組合への委託は、中小事業主等と違い特別加入の要件ではありません。    

●特別加入者への保険給付

 以下のように一般の労働者とは少し異なる保険給付の内容になります。    ◆特別加入者は、加入申請のときに業務内容を届出なければならず、災害を被った場合、   その災害の認定も届出た業務内容の範囲において行われます。 中小事業主の場合、   株主総会・役員会・各団体の会議への出席やその用務並びに所定時間外の   特別加入者だけの仕事に係る災害について、災害認定はされないことになります。    ◆特別加入者の通勤災害は、個人タクシー業者・個人貨物運送業者・   家内労働者とその補助者には適用されません。    ◆特別加入者に支給される特別支給金は、「ボーナスを対象としている支給金」以外   のものに限られます。    ◆海外派遣特別加入者について、派遣先の国の労働保険等から給付を受けても、   日本の労災保険給付との間では調整はされません。

役員は雇用保険には加入できないのですか?

質問日:2009/04/25
中小企業の役員です。私は使用人兼務役員で、取締役兼営業部長の肩書きです。
役員は雇用保険に加入できないと聞いたのですが、私は普通のサラリーマンが出世した
だけで、感覚的には雇用されているのですが、これでも無理でしょうか?

原則:役員は雇用関係ではなく委任関係なので・・・

回答日:2009/05/22

★雇用保険をざっくり掴みましょう

●雇用保険とは。 失業給付や就業促進手当、育児休業手当や介護休業手当等の各種手当、 教育訓練給付、助成金等がある国の制度です。 ●保険料負担。 保険料は労働者だけでなく事業者も負担します(強制保険)。 ●どんな会社に加入義務があるか。 事業主が従業員を一人でも雇った場合は雇用保険に加入することが強制されます。 ●所得税との関係 雇用保険の給付に対して所得税はかかりません。 金額がいくらになっても「扶養家族(配偶者控除も含む)」の対象になります。 ●社会保険との関係 社会保険の観点からは収入として扱われます。 130万円を超える額を受給している間は「被扶養者」に該当せず、 国民健康保険と国民年金に加入することになります。 ●失業給付のテクニック 失業給付(基本手当)の給付日数は、自己都合か会社都合かにより違いがあります。 場合によっては2倍以上の差になりますね。 会社都合にできるかどうかのテク!?は、知っている知ってないで大きく変わります。 うまく会社都合退職にして失業保険を多くもらう術もあります。 ●雇用保険の加入手続 事業主が雇用保険に加入する場合の手続きは、事業を開始したときに、 労働保険保険関係成立届・雇用保険適用事業所設置届・労働保険概算保険料申告書 を事業所の管轄する労働基準監督署、公共職業安定所へ提出します。 その際、雇い入れた労働者に係る「雇用保険被保険者資格取得届」も一緒に 提出する必要があります。

★雇用保険はどんな人が対象になるのでしょう?

●パートを雇っている場合  ◇1年以上引き続き雇用されることが見込まれること。  ◇週間の所定労働時間が20時間以上であること。   ⇒この場合は、パートでも雇用保険に入らなければなりません。 ●学生アルバイトを雇っている場合 学生のアルバイトは学業が本務であることから、原則として被保険者にはなりません。 但し、卒業見込み証明書を有していて卒業後も引き続き当該事業所に勤務する予定の者や 休学中の者は雇用保険に入る必要があります。 ●取締役は被保険者となるのか?  ◇原則論   会社と取締役・監査役等との関係は、雇用契約ではなく、委任契約なので、   雇用労働者には該当せず、被保険者とはなりません。     ◇使用人兼務役員   会社を代表しない取締役については、同時に部長等従業員としての身分も併せて有し、   従業員としての就労と、取締役としての職務の双方を行う場合があります。   いわゆる、使用人兼務役員です。   このような場合は、労働者的性格が強いかどうかを判断し、会社との間に   雇用契約があると認められる場合は、被保険者として取り扱うことが可能です。     ◇株式会社の代表取締役、有限会社の会社を代表すべき取締役   上記のような会社の代表者については、雇用関係ということはあり得ませんので   被保険者にはなりません!