土地の公的評価額の種類
土地については、実際に市場で取引が成立して確定した「実勢価格」のほかに、公的価格として「公示地価」、「基準地価」、「相続税評価額」、「固定資産税評価額」等があります。
これらの価格は、土地価格評価の目的がそれぞれにことなることから、異なる価格が公表されています。
各公的価格は、1つの土地に対して、異なる実施主体がそれぞれ違った尺度で不動産の価値を客観的に評価するため、異なる価格となっています。このように、1つの土地に対して客観的価格が4つ存在することを、「一物四価」といいます。
「公示地価」や「基準地価」が一般に土地取引の指標となる価格を提供する性格をもつのに対して、「相続税評価額」や「固定資産税評価額」は税金徴収の目的で提供される価格となります。
このため、「相続税評価額」や「固定資産税評価額」は、「公示地価」や「基準地価」に比較して、相対的に低い価格での評価となっています。具体的には、「相続税評価額」は80%の水準、「固定資産税評価額」は70%の水準を目途に決定されているといわれています。
◇各公的価格の概要は、以下の表になります。
公示地価 | 基準地価 | 相続税評価額 | 固定資産税評価額 | |
決定機関 | 国土交通省 | 都道府県 | 国税庁 | 市町村 |
基準日 | 毎年1 月1 日 | 毎年7 月1 日 | 毎年1 月1 日 | ・基準年度の前年の1 月1 日 ・3 年に1 度評価替え |
公表日 | 3 月下旬 | 9 月下旬 | 8 月中、下旬 | 3 月1 日 |
利用目的 | 土地取引の指標 | 土地取引の指標 | 相続税・贈与税の評価基準 | 固定資産税・都市計画税・不動産取得税・登録免許税などの評価基準 |
価格水準 | 100% | 100% | 80% | 70% |
公示地価
内容
国土交通省が毎年1月1日時点の全国で選定された約3万数千地点の「標準地」について、その更地価格を3月下旬ごろに公表します。
公示地価は、1地点について不動産の鑑定評価の専門家である2人以上の不動産鑑定士が各々別々に現地を調査し、最新の取引事例やその土地からの収益の見通しなどを分析して評価を行い、国土交通省の土地鑑定委員会が、地点間や地域間のバランスなどを検討し、決定されます。
各公的価格のうち、最も早く公表される客観的価格であり、各公的価格の指標価格になるものであるために、不動産価格の動向をとらえるものとして、極めて重要な情報となっています。
公表目的
一般の人が土地取引や資産評価をするに当たって、土地の適正な価格を判断するには客観的な目安が必要になります。
公示地価を公表することにより、一般の土地の取引価格に対して指標を与えることができるという点が、公表の大きな目的となります。
その他、公共事業用地の取得価格算定の規準となる価格の公表、相続税評価額や固定資産税評価額の基準となる価格の公表という目的も持ちます。
利用
公示地価は、土地周辺のさまざまな条件を考えて、「標準的な土地」を地価公示の対象とされます。
このため、「標準地」と「取引等の対象地」との「土地の形状」、「周辺の状況」、「駅までの距離」や「ガス・水道・下水道の整備状況」などが比較され、実際の土地売買取引における売買価額の指標として利用されます。
ただし、公示地価の公示対象となる土地は、その数に限りがあるために、指標として利用できる地域が限定されるという限界も存在します。
基準地価
内容
各都道府県が毎年7月1日時点の基準値(更地価格)を9月下旬ごろに発表します。都道府県知事が各都道府県の区域から基準地を選定し、不動産鑑定士が調査を行い価格を算定します。公表地点は、全国で約3万地点ほどになります。
公表目的
土地取引の価格規制を行う場合の審査において、「相当の価格」を判断する際の規準として使用するために公表されます。
また、「公示地価」とともに、一般の土地の取引価格の指標を与えることができるという点が、公表の目的となっています。
公示地価との比較
「基準地価」の価格水準は、「公示地価」の価格水準と同程度となります。
利用
公示地価の約半年後に公表され、かつその価格水準も公示地価と同程度であることから、公示地価との組み合わせにより、半年後の土地の価格推移を把握する等に利用されます。
相続税評価額
内容
国税庁が毎年1月1日時点の価格を8月下旬あたりに発表する価格です。
市街地域の「路線に面する標準的な1m2当たりの土地評価額(路線価)」が、「公示価格」や「売買の実例」等を参考にして決められます。
公表目的
相続税や贈与税などを算定する際の基準価格とするために公表されます。
公示地価との比較
相続税評価額は、相続税や贈与税等を算定する際の基準価格とするために決定されるものであるために、その評価額は、通常「公示地価」や「基準地価」よりは低い金額で評価されます。
「相続税評価額」の価格水準は、「公示地価」の価格水準の80%程度となるように決定されます。
利用
「公示地価」や「基準地価」は、その評価対象が極めて限られた地点となるために、「標準地」が近隣に存在しない場合には、「公示地価」や「基準地価」を指標として利用できない場合があります。
他方、「相続税評価額」はその評価対象が格段に多くなることから、土地価格の指標となる価格が格段に多くなります。
「固定資産評価額」は「公示地価」の80%を目安として決定されていることを前提にすれば、「固定資産税評価額×1.25」の金額を利用すれば、「公示地価」や「基準地価」に近似した土地価格の把握ができる利点があります。
固定資産税評価額
内容
市町村が3年に一度、基準年度の前年の1 月1 日時点の価格を3月31日に、「固定資産税評価路線価」などを基準に算出され公表されるものです。
公表目的
固定資産税、都市計画税、登録免許税、不動産取得税などを徴収する上での基礎価格にするために公表されます。
公示地価との比較
固定資産税評価額は、固定資産税等を算定する際の基準価格とするために決定されるものであるために、その評価額は、通常「公示地価」や「基準地価」よりは低い金額で評価されます。
また、毎年算定されるものではなく、3年に1回評価されるものであるために、納税者の不利にならないような評価がなされます。
「固定資産税評価額」の価格水準は、「公示地価」の価格水準の70%程度となるように決定されます。
利用
「固定資産税評価額」は他の公的価格に比較して、その評価対象が最も多くなります。
また、その価格情報についても入手が容易にできます。
このため、広くかつ簡単に把握できる土地の価格情報として、多くの場面で利用されています。
「固定資産評価額」は「公示地価」の70%を目安として決定されていることを前提にすれば、「固定資産税評価額×1.43」の金額を利用すれば、「公示地価」や「基準地価」に近似した土地価格の把握ができる利点があります。
負担調整措置とは
平成6年度に評価の均衡を図るため、「土地の固定資産税評価額」の水準を全国一律に「地価公示価格等の70%」を目途とする評価替えが行われました。
そして、土地に係る固定資産税、都市計画税の課税標準額は、この【「地価公示価格等の70%」を目途に決定された「固定資産税評価額」】に基づいて計算される金額が、本来的なものとして位置づけられました。
この結果、平成6年度の評価額が急激に上昇することとなりました。(全国平均では、平成5年度評価額に比べ、平成6年の評価額は、全国平均で4倍に急上昇しました。)
このため、これまで相対的に少額の固定資産税しか支払っていなかった地域では、固定資産税等の大幅な増税となってしまう現象が生じてきました。
ただし、急激な固定資産税等の増税は、納税者に対して大きな負担となることから、毎年少しずつ固定資産税が増加するような措置が施されました。
これが「負担調整措置」といわれるものです。
本則課税標準額
土地の固定資産税、都市計画税の課税標準計算においては、「本則課税標準額」という言葉が使用されます。
この「本則課税標準額」とは、上記の「負担調整措置」が適用される前の金額をいいます。
「負担調整措置」は、急激な固定資産税等の増税を回避するための、例外的な措置です。
土地の固定資産税等の課税標準額は、本来的には、「負担調整措置が適用される前の金額」であると考えられています。
このことを表現するために、最終的な「課税標準額」とは区別した表現である、「本則課税標準額」という言葉が使用されます。
・住宅用地の場合には、「住宅用地に対する課税標準の特例措置が適用された後の金額」が「本則課税標準額」となり、
・住宅用地以外の土地の場合には、「固定資産税評価額」が「本則課税標準額」となります。
負担調整措置の計算
負担調整措置には、「住宅用地に対する負担調整措置」と「住宅用地以外の土地に対する負担調整措置」があります。
また、負担調整措置の適用は、「負担水準」ごとに計算方法が異なります。このため、「負担水準」を把握する必要があります。
以下では、それぞれについてご説明致します。
負担水準
「負担水準」とは、「前年度の課税標準金額」が「本則課税標準額」のどれだけの割合に達しているかをパーセントで表示したものです。
具体的な計算式は以下のようになります。
負担水準(%) = 前年度の課税標準金額 / 本則課税標準額 × 100 |
住宅用地に対する負担調整措置
- 負担水準が100%以上の住宅用地については、「本則課税標準額」が「課税標準額」となります。
- 負担水準が100%未満の住宅用地については、以下の金額※が「課税標準額」となります。
「前年度課税標準額」+「本則課税標準額」× 5% ※当該金額が、「本則課税標準額」の20%を下回る場合には20%に相当する額となります。
住宅用地以外の土地(店舗、事務所、工場等の敷地、空地)に対する負担調整措置
- 負担水準が70%を超える商業地等については、「本則課税標準の70%」が「課税標準額」となります。
- 負担水準が60%以上70%以下の商業地等については、「前年度課税標準額」が据え置かれます。
- 負担水準が60%未満の商業地等については、以下の金額※が「課税標準額」となります。
「前年度課税標準額」+「本則課税標準額」× 5% ※当該金額が、「本則課税標準額」の60%を上回る場合には60%に相当する額となります。
※当該金額が、「本則課税標準額」の20%を下回る場合には20%に相当する額となります。
負担調整措置の概要図
下記が、負担調整措置の概要図となります。
住宅用地
住宅用地以外の土地