学資金に対する所得税の規定
事業主(会社等)から、役員・使用人に、学資金として支給するものに対する所得税法の規定には、以下のものがあります。
【原則規定】
事業主(会社等)から役員又は使用人に対して’・これらの者の修学のため、 ・又は、これらの者の子弟の修学のため、 ‘学資金等として支給される金品は、原則として、当該役員又は使用人に対するに規定する「給与」、「賞与」として取り扱われますので、所得税が課税されます。 |
【 例外規定①】
・事業主が使用人に対しその者の学校教育法第1条《学校の範囲》に規定する学校(大学及び高等専門学校を除く。)における修学のための費用に充てるものとして支給する金品で、 その修学のための費用として適正なものについては、所得税を課税しなくてもよいことになっています。 ・ただし、役員又は使用者である個人の親族のみをその対象とする場合には、所得税が課税されます。 |
【例外規定②】
会社から、役員や従業員に対して支給する学資金のうち、「技術や知識の習得費用」は、次の三つのいずれかの要件を満たしており、その費用が適正な金額であれば、所得税を課税しなくてもよいことになっています。
(1) 会社などの仕事に直接必要な技術や知識を役員や使用人に習得させるための費用であること。 (2) 会社などの仕事に直接必要な免許や資格を役員や使用人に取得させるための研修会や講習会などの出席費用であること。 (3) 会社などの仕事に直接必要な分野の講義を役員や使用人に大学などで受けさせるための費用であること。 |
学資金に対する所得税の課税・非課税の範囲
学資金に対して所得税が非課税となる範囲
学資金に対して所得税が非課税となる範囲は、上記の規定における「例外①」又は「例外②」に該当する場合です。
例外①の規定内容
1)この規定は、会社等が従業員本人に対して学資金を支給する場合の規定です。
⇒ 役員への支給や役員・従業員の子弟への支給については、この規定は適用されません。
2)この規定では、高等学校までの学費等を会社が支給している場合には、その支給額が適正な範囲である場合には、所得税を課税しなくてもよいということを明文化しています。
⇒ 大学や高等専門学校の修学費には、この規定は適用されません。
例外②の規定内容
1)この規定は、会社等が役員や従業員に対して技術や知識の習得費用を支給する場合の規定です。
⇒ ただし、会社の業務遂行上で直接必要と認められる技術や知識の習得費用であれば、役員や従業員の子弟に対する支給についても、この規定が適用される可能性はあります。(あまり現実ではないと思われますが。)
⇒この規定では、役員についても、適用の対象となります。
2)「技術や知識の習得」が会社の業務遂行に直接関係していることが必要となります。
学資金に対して所得税が課税される範囲
会社から、役員や従業員に対して支給される学資金について、上記の「例外①」「例外②」に該当しない場合には、その支給額は「給与」や「賞与」として扱う必要があります。
「給与」や「賞与」として扱われる学資金の支給に対しては、所得税が課税されるために、会社がその支給を行う際には、源泉徴収を行うことが必要となります。
「制服」等の現物支給に対する所得税の規定
規定
制服等の支給に対して、「その支給を受けた人」の所得税が非課税となる規定は以下のものとなります。
警察職員、消防職員、刑務職員、税関職員、自衛官、鉄道職員などのように、組織上当然に制服の着用を義務付けられている一定の範囲の者に対し、使用者が支給する制服については、所得税が課税されません。 |
職務の性質上、制服を着用しなければならない役員又は使用人に対して、支給又は貸与する制服その他の身の回り品については、所得税が課税されません。 |
専ら勤務場所のみにおいて着用する事務服、作業服等については、所得税を非課税として取り扱ってもよいとされています。 |
規定の考え方
所得税を非課税とする理由
制服等の支給は、支給を受ける人の職務の遂行上欠くことのできないものであるとともに、その支給は事業主自身の業務上の必要性に基づくものです。
このように考えると、制服の支給に係る費用は、事業主が負担すべきであると考えることができます。
このように、制服等の支給は、その支給を受ける人に「特別な経済的利益」を与えるものでないとの考え方から、一定の制服等の支給については、所得税を非課税としています。
所得税が非課税となる制服
所得税法では、「制服」と名のつくものすべてを非課税としているのではなく、「制服」といわれるものが「その支給を受けた人」に対して「特別な経済的利益を与えない」という理由から、所得税を非課税としています。
このため、「非課税となる制服」は、名称の如何に関わらず、それが、支給を受けた人に対して「経済的利益を与えないもの」であることが必要となります。
このため、「非課税とする制服」については、以下のように厳格に規定しています。
① 警察職員、消防職員、刑務職員、税関職員、自衛官、鉄道職員などのように組織上当然に制服の着用を義務付けられている一定の範囲の者に対し使用者が支給する制服
② 職務の性質上、制服を着用しなければならない役員又は使用人に対して、支給又は貸与する制服
③ 専ら勤務場所のみにおいて着用する事務服、作業服等
非課税となる制服の要件
上記のような場合以外の「制服等の支給」では、下記の要件を満たす場合に、所得税が非課税として取り扱われます。
① 専ら勤務する場所において、通常の職務を行う上で着用するもので、私用には着用しない又は着用できないものであること
② 事務服等の支給又は貸与が、その職場に属する者の全員又は一定の仕事に従事する者の全員を対象として行われるものであること(更に厳格にいえば、それを着用する者がそれにより一見して特定の職員又は特定雇用主の従業員であることが判別できるものであること)。
スーツ等の支給
スーツ等を制服として支給している場合には、「非課税となる制服」が限定されているということを考慮して、給与とするのか?福利厚生費とするのか?を慎重に検討する必要があります。
①私服としても着用できるスーツ等
スーツ等で、私服としても着用できるものを制服としてし支給する場合には、上記の①の要件である「私用には着用しない又は着用できないもの」を満たさず、所得税が課税される制服に該当する可能性が極めて高いと思われます。
②特定の役員・従業員に対してのみ支給するスーツ等
スーツ等で、特定の役員・従業員に対してのみに制服としてし支給する場合には、上記の②の要件である「その職場に属する者の全員又は一定の仕事に従事する者の全員を対象として行われるもの」を満たさず、所得税が課税される制服に該当する可能性が極めて高いと思われます。
③社名等のロゴ入りのスーツの支給
・社名等のロゴ入りのスーツを、その職場に属する者の全員又は一定の仕事に従事する者の全員を対象として支給している場合には、当該スーツを私服として使用する可能性は通常低いと考えられますので、「非課税となる制服」として、所得税が非課税となる可能性は高くなります。
・ただし、ロゴ等がスーツの裏地に付けられていたり、簡単に隠せる等の場合には、私服として使用できる可能性が高くなり、所得税が課税される制服に該当する可能性が高くなると思われます。
「制服手当」等の現金支給
所得税の課税
制服等の現物を支給する代わりに、「制服手当」等として現金を支給する場合には、その金額の多少に関わらず、「支給を受けた人」に対する給与として、所得税が課税されます。
このため、このような場合には、支給金額に対して、源泉徴収が必要となります。
理由
制服等の支給は、「その支給を受けた人」の「特別な経済的利益」とならないために、非課税とされるものです。
制服等の現物支給に代えて、現金を支給する場合には、非課税とする前提の「特別な経済的利益を受けない」という前提がなくなるために、その金額の多少に関わらず、支給金額の全額に対して所得税が課税されます。