売上の会計処理
Ⅰ 売上取引の目次
- 棚卸資産の販売による収益計上(決算時以外)
- 棚卸資産の販売による収益計上(決算時)
- 決算時に計上した売掛金が回収された場合
- コンサルティング収入の収益計上
- 売上返品・値引・割戻し
Ⅱ 仕訳例
1 棚卸資産の販売による収益計上(決算時以外)
(1)例示
商品を100万円(税抜き)で売上、代金が入金された。
(2)仕訳
◆入金時
(税抜方式) (借方) (貸方)
現金預金 1,080,000 | 売上 1,000,000 |
仮受消費税等 80,000 |
(税込方式)
(借方) (貸方)
現金預金 1,080,000 | 売上 1,080,000 |
(3)仕訳のポイント
・決算時以外の場合には、代金入金と売上を同時に計上します。
2 棚卸資産の販売による収益計上(決算時)
(1)例示
決算日までに、商品を100万円(税抜き)で売上げたが、代金はまだ入金されていない。
(2)仕訳
◆決算仕訳
(税抜方式) (借方) (貸方)
売掛金 1,080,000 | 売上 1,000,000 |
仮受消費税等 80,000 |
(税込方式)
(借方) (貸方)
売掛金 1,080,000 | 売上 1,080,000 |
(3)仕訳のポイント
・法人税法上、たな卸資産の販売による収益計上は、引渡基準によるのが原則となります。したがって、決算月末までに、引渡済みであるが、代金がまだ入金されていない売上をリストアップする必要があります。
・何をもって引渡しがあったと認識するかについては、
A 出荷日
B 検収日
C 使用収益可能日
D 検針日 等、
たな卸資産の種類及び性質、契約内容等により合理的と判断されるものを法人が継続適用する必要があります。
・まだ代金が入金されていないので、売掛金(売上債権)を計上します。
3 決算時に計上した売掛金が回収された場合
(1)例示
決算において、売掛金計上した代金108万円(税込み)が翌期に回収された。
(2)仕訳
◆代金回収時
(借方) (貸方)
現金預金 1,080,000 | 売掛金 1,080,000 |
(3)仕訳のポイント
・決算において計上した売掛金は、翌期において消しこみを行います。
・前期に売り上げ計上しているため、代金入金時において、誤って「売上」計上しないように注意が必要です。
4 コンサルティング収入による収益計上
(1)例示
コンサルティング業務が完了し、顧客から100万円(税抜き)が入金された。
(2)仕訳
◆入金時
(税抜方式) (借方) (貸方)
現金預金 1,080,000 | 売上 1,000,000 |
仮受消費税等 80,000 |
(税込方式)
(借方) (貸方)
現金預金 1,080,000 | 売上 1,080,000 |
(3)仕訳のポイント
・会計上、業務を完了したときに収益を計上するのが原則です。
・法人税法上、総額が決まった契約であっても、業務の提供にかかる報酬額が業務日数により算定され、かつ、一定期間ごとにその金額を確定させて請求するケースでは、請求ベースで収益計上する必要があります。
5 売上返品・値引・割戻し
(1)例示
客先から販売した商品100万円(税抜き)の返品があった。
(2)仕訳
◆入金時
(税抜方式) (借方) (貸方)
売上 1,000,000 | 現金預金 1,080,000 |
仮受消費税等 80,000 |
(税込方式)
(借方) (貸方)
売上 1,080,000 | 現金預金 1,080,000 |
(3)仕訳のポイント
・商品等の返品については、販売先から返品があった日、または返品する旨の通知を受けた事業年度に処理します。
・売上値引とは、売上品の量目不足、品質不良、破損等の理由により代価から控除される額等をいいます。
・売上割戻し(リベート)は、売上高から控除します。売上割戻しの計上時期は、計算の基準となった売上が計上された事業年度が原則です。ただし、算定基準が明示されていないときには通知又は支払をした日の属する事業年度となります。
仕入の会計処理
Ⅰ 仕入取引の目次
- 商品の仕入れによる費用計上(決算時以外)
- 商品の仕入れによる費用計上(決算時)
- 決算時に計上した買掛金の支払いをした場合
- 在庫がある場合の決算時の処理
- 仕入返品・値引・割戻し
Ⅱ 仕訳例
1 商品の仕入れによる費用計上(決算時以外)
(1)例示
商品を100万円(税抜き)で仕入れ、代金を支払った。なお、商品の引き取りに要した運賃1万円(税抜き)が発生した。
(2)仕訳
◆支払時
(税抜方式) (借方) (貸方)
仕入 1,010,000 | 現金預金 1,090,800 |
仮払消費税等 80,800 |
(税込方式)
(借方) (貸方)
仕入 1,090,800 | 現金預金 1,090,800 |
(3)仕訳のポイント
・決算時以外の場合には、仕入代金の支払いと仕入を同時に計上します。
・仕入付随費用は、仕入高に含めます。ただし、一部少額である場合には、仕入高に含めないことができます。少額とは、購入価格のおおむね3%以内とされています。
2 商品の仕入れによる費用計上(決算時)
(1)例示
決算日までに、商品を100万円(税抜き)で仕入れたが、代金はまだ支払っていない。
(2)仕訳
◆決算仕訳
(税抜方式) (借方) (貸方)
仕入 1,000,000 | 買掛金 1,080,000 |
仮払消費税等 80,000 |
(税込方式)
(借方) (貸方)
仕入 1,080,000 | 買掛金 1,080,000 |
(3)仕訳のポイント
・決算月末までに、商品を仕入れているが、代金をまだ支払っていない場合の仕入れをリストアップする必要があります。
・まだ代金を支払っていないので、買掛金(仕入債務)を計上します。
3 決算時に計上した買掛金を支払った場合
(1)例示
決算において、買掛金計上した代金108万円(税込み)を翌期に支払った。
(2)仕訳
◆代金支払時
(借方) (貸方)
買掛金 1,080,000 | 現金預金 1,080,000 |
(3)仕訳のポイント
・決算において計上した買掛金は、翌期において消しこみを行います。
・前期に仕入計上しているため、代金支払時において、誤って「仕入」計上しないように注意が必要です。
4 在庫がある場合の決算時の処理
(1)例示
決算日において、商品30万円(税抜き)が在庫として残った。また、期首時点では、在庫として20万円(税抜き)があった。
(2)仕訳
◆決算仕訳
(税抜方式,税込方式) (借方) (貸方)
商品 300,000 | 期末商品たな卸高 300,000 |
期首商品たな卸高 200,000 | 商品 200,000 |
(3)仕訳のポイント
・決算時において、売上高に対応する費用(売上原価)を確定する仕訳が必要となります。
・期末の在庫金額を当期の損益計算からはずし、期首の在庫金額を当期の損益計算に受け入れます。