「介護で働く人たちが少ないな。特に若い人たちがあまり定着しないし、どんどんやめていく人が多いな。」

「介護業界で働きたいと思える環境作りをするにはどうしたら良いんだろうか。」

少子高齢化の影響で、高齢者の数が増えて、介護が必要な人々がますます増えてくる傾向にある昨今。介護が必要な人たちを支えていける若い人材の数が減少し、深刻な人手不足にあります。介護以外の業界でも人手不足は深刻とも言え、各業界の企業も人材確保に必死な状況です。

 

こうした人手不足な状況の中、介護業界でも若い人材を確保するために働く環境に工夫を凝らさなければいけません。また、若い人材が介護業界でやりがいを持って働けるような職場作りをすることも重要です。

 

それでは、どうやったら介護業界に若い人材が定着し、介護業界で働く人材がやりがいを持って働けるようになるのでしょうか。今回の記事では、こうした介護業界で働く人材の現在と介護業界で定着率の高い企業が行っている取り組みを中心に解説し、介護業界の人手不足を解消できるアイディアを紹介します。

 

この記事を書いている私は、これまでに介護をテーマに様々な人たちに取材をし、多くの介護に関する記事を作成しました。今回の記事では私のこれまでの取材経験と新たに今回のテーマについて取材をした知見をもとに記事を作成します。

 

今回の記事を読むことで、介護業界の現在地について理解が深まり、これからどのような職場作りをすれば良いのか、あるいはどのような職場を選んでいけば良いのかがわかります。

 

ぜひ最後まで記事を読んでみて、介護業界についての知見を深めていただけますと嬉しいです。

介護業界の若者離れ

少子化の影響で、そもそも若い世代が少なくなっていることもあり、介護業界で働く若い世代が少なくなっています。介護の養成学校の入学者推移を見ていくと、年々入学者が減っていることがわかります。

 

入手可能な範囲で調べたところによると、2006年の介護養成学校の入学者数は1万9289人でした。一方で令和4年の数字は6802人でした。2006年では外国人留学生がほとんどいない年で、令和4年は外国人留学生が増えている年です。

 

こうした数字から分かるように、若い人材の介護業界に携わろうとする人数が減っていることがわかり、さらには少子化が進んでいることが如実に分かる結果になっています。かつて介護保険がスタートした年は、希望に満ち溢れた様子ではありましたが、徐々に介護業界の過酷さが露呈され始め、あまり業界を志す人が減ってきたことでしょう。

介護について学ぶ養成校の減少

将来の介護職員を育てる養成学校が近年減少しています。元々は日本人の介護を志す人たち以外にも、外国人留学生を受け入れる目的で養成学校を設立していました。しかし、近年ではコロナ禍による入国制限もあり、外国人技能研修生の受け入れができなくなり、養成学校自体の運営にも大きく影響を与えました。

 

その結果、養成学校が軒並みに閉鎖される自体が発生し、介護職員を育てる教育機関の減少へと繋がりました。2000年代には400校を超えていた養成学校の数が今年度には314校に減少しました。

 

コロナ禍が落ち着いてきたとはいえ、今後介護の養成学校が増えてくる見通しはなく、むしろ介護業界を志す人材の数が減少してくる傾向にあります。ただでさえ、人材不足に悩む介護業界にとっては泣きっ面に蜂のような状態にあります。

介護職員が不足している理由3選

ここでは改めて介護職員が不足している理由を紹介していきます。介護職員が不足している原因はたくさんありますが、ここでは大きく3つの理由について紹介していきます。

 

・少子高齢化による生産年齢人口の減少

少子高齢化によってもたらされる若年層の減少によって、生産年齢人口が減っています。生産年齢人口が減ることで、介護業界に限らず、あらゆる産業で人手不足になってしまいます。

 

他の業界と比較して介護業界を志す若者が少ないので、少子化による労働者の担い手が減ってしまうのは目に見えています。

 

・定着率が低い

介護業界に勤めたは良いが、なかなか職場に定着しないということが起きています。職場に定着せずに、職場を転々と変える人材が多く、企業のナレッジが蓄積されないということが起きてしまいます。

 

また、人材が定着しないことから、別の人材を探しても見つからないという減少が当たり前のように起きてしまいます。

 

・介護業界の働く環境に問題がある

介護業界の働く環境が過酷であるということが人材不足の要因にもなっています。介護業界は職場によってはシフト制で夜勤などもあり、不規則な働き方を虐げられることもあります。

 

働く環境が不規則で、肉体的に重労働でもあるので、その過酷さに耐えられずに離職してしまうということが度々発生しています。

介護業界の人材不足を防ぐ日本政府の施策とは

介護業界の人材不足を受けて厚生労働省は介護人材の確保のために平成27年度補正予算案・平成28年度当初予算案で3つの柱でできた対策を打ち出しています。今回の章では、これら3つの施策を紹介していきます。(参考:厚生労働省 福祉・介護人材確保対策等について)

 

1.離職した介護人材の呼び戻し

一度介護の仕事をしていた人材の呼び戻しをするために、再就職に必要な準備金の貸付をします。条件は1年以上介護職員の経験があることとしています。再就職をして2年間働き続ければ、準備金の返済は全額免除されます。また、福祉人材センターに「離職した介護職員の届出」をうけるシステムを新設し、ニーズに応じた求人情報を提供するなどの再就職支援対策を強化しています。

 

2.新規参入促進

介護職を目指す学生を増やして入学後の勉学を支援し、卒業後の介護現場への就職と定着を促進するために学費の貸付を実施します。卒業してから一定期間内に介護業界へ就職し、5年間介護の仕事を続ければ、学費の返済は免除されます。

 

3.離職防止・定着促進

介護職員の離職理由に対して総合的な対策を実施して、離職防止・定着促進を進めていきます。医療介護基金を新たに追加して増やすことで、目標の達成を目指しています。

 

主な離職理由としては、将来性を感じられなかったとしたものでした。対策として介護人材のキャリアアップを図るため、医療的ケアの研修機会を増やし、研修機関の開設を支援します。また現役の介護職員が介護福祉士を目指すために研修を受けている間、職場をサポートする代替要因の経費を支援します。そのほかキャリアパスの整備を行う事業者への助成、新たに賃金制度を導入した事業主への支援を行います。

介護業界で定着率の高い職場の特徴とは

介護業界で定着率が比較的高いとされる職場は、従業員にとって働きやすい環境づくりに取り組んでいる傾向にあります。介護職員がやりがいを持って業務に取り組めるように、柔軟な働き方に取り組んでいる場合があります。

 

子供の面倒やご自身の介護に参加しやすいような職場作りを推進していたり、資格支援制度を設けている職場があります。こうした従業員にとってやる気を引き起こせるような職場は定着率が高い傾向にあります。

 

実際に、資格取得支援をすることで、職員一人一人のスキルが上がり、結果的に生産性が向上している効果が数多く見られます。生産性が上がることで、従業員一人一人のやりがいが持てて、結果的に定着率が上がっています。

どのような介護の職場が若者に選ばれるのか

それでは果たして、どのような職場が若者に選ばれるのでしょうか。ここまで説明してきたように、介護業界を志す若い人がどんどん少なくなっていく中で、新しい若い人材は将来に希望が持てる職場を選ぶ傾向にあります。

 

将来に希望が持てるとは、若い人材がこれから変わらずに同じ職場で勤め続けられるという環境ももちろんですが、彼ら自身の成長が期待できる環境を求めている傾向にあります。生まれた時から景気が良かった訳ではない彼らにとって同じ環境にずっといたい気持ちはありますが、同じ環境にいられないのではないかという気持ちを強く持っています。

 

こうした若い人材は自分自身が成長できる、キャリアアップできる環境を求めている傾向にあります。また同時に、それぞれのプライベートも重視したいという傾向にあり、仕事とプライベートを充実できる環境を求めている傾向にあります。全てを叶えるのは難しいかもしれませんが、少なくとも今回挙げたことに当てはまるところに若い人材が集まる傾向にあるのは間違いありません。

まとめ

今回の記事では介護の若者離れについて解説しました。今回の記事のポイントは次のとおりです。

・2006年の介護養成学校の入学者数は1万9289人でしたが、令和4年の数字は外国人留学生を含めて6802人。

・介護養成学校が2000年代には400校を超えていた養成学校の数が今年度には314校に減少。

・介護業界の人材不足を防ぐ日本政府の施策として、離職した介護人材の呼び戻し・新規参入促進・離職防止・定着促進を掲げている。

少子高齢化の影響で、あらゆる業界で人材不足が叫ばれている昨今。介護業界は特に職場の印象が良くないというイメージが先行しやすく、あまり人が定着しない傾向にあります。

 

こうした状況の中でも、日本政府はこれからの介護業界の重要性を理解し、さまざまな援助をしてくれています。少しでも若い人材が介護業界を志し、介護の仕事を望む全ての人が安心してはたらける環境を作ろうとしています。

 

介護業界のイメージはネガティブな面が多いかもしれませんが、少しでも若い人材が介護を志せるようになってくれるよう、介護業界にポジティブなイメージを持って、希望を持って働ける環境になれるよう願っています。

また、今回の記事を読んで、少しでも介護業界について理解していただけると嬉しいです。