「介護の仕事をしているけど、すごく忙しいな。もう少し人手を増やしてくれないととてもじゃないけれど仕事が回らないや。」

「どこの現場でも介護はすごく忙しいと聞くけれど、実際はどうなのかな。この辺りの対策をどのように考えているのだろうか。」

人手不足で騒がれている介護業界。最近では少子高齢化の影響もあり、入居希望をする高齢者は増えるものの、肝心の働き手である若年層が減ってきている現実があります。介護業界の現場では一人でも多くの人材を確保して介護現場を円滑にまわせるようにしたいと考えていることでしょう。

 

とはいえ、現実では求人募集をかけてもなかなか人が集まらない、希望に合った人材の確保ができないといったことが多く見受けられています。特に2025年からは更なる人手不足が深刻化するといわれ、ますます人手不足の課題は深刻になる一方です。

 

介護現場で働いているから、なんとなく現場の実態はわかるけど、具体的にどんなことが課題となっているのかを改めて整理することで今の課題についてもわかることでしょう。今回の記事では介護業界の人手不足の原因とその対策について記事にしていきます。

 

この記事を書いている私は、これまでに数多くの介護に関する記事の取材を行い、多くの記事を作成しました。今回は私のこれまでのインタビュー経験をもとに記事を作っていきます。

この記事を読むことで介護業界の現状の課題とその対策について理解することができます。

 

ぜひ最後まで読んでいただき、介護業界についての理解を深めてくださいね。

介護業界の人手不足の背景と現状

介護業界が人手不足になってしまう背景には「少子高齢化」の影響が大きいです。高齢化は社会的な問題になっており、介護業界のみならず、すべての業界に影響を与えています。「令和元年版高齢者社会白書」によると、日本の総人口は平成30年10月1日時点で1億2,644万人になっており、65歳以上の高齢者は人口の28.1%を占めています。前年が27.7%という数字からも、今後も高齢者の割合は増加傾向にあるといえます。

 

この超高齢化社会とも言える状況によって、介護現場の仕事量はどんどん増えていく一方、少子化の影響でますます働き手が少なくなってきているのが現状です。また、介護の仕事が仕事の大変さに対して社会的評価が低いことが挙げられます。特に給与の低さが社会的な評価を低くしてしまう原因にもなっています。

 

全業種の平均年収が約440万円となっているところ、介護福祉士の平均年収は推定で330万円程度と言われています。昨今の物価上昇に伴って、賃上げを実施する介護事業所が増えている傾向にありますが、依然として年収は低いとされている状況は変わりないようです。

介護業界の人手不足の原因とは

介護業界が人手不足に陥ってしまう原因は、給与の低さや待遇の悪さと人間関係のストレスによるものが多い傾向にあります。給与に関しては、全産業の中でも低い水準にあるものといわれ、また雇用面での待遇が悪いと指摘する声もあります。介護事業所にもよりますが、本来一般的な企業にあるとされている福利厚生がないとされる介護事業所も少なくありません。

 

また、人間関係のストレスによるものが介護業界の人手不足を招く原因にもなっています。介護の現場では、介護者や介護者の家族、医療機関スタッフなどと様々な人と関わることがあるため、他の業界よりもストレスを感じることが多い傾向にあります。

 

給与や待遇が悪い上に、人間関係でストレスに感じるとなると、仕事に対するモチベーションが落ちてしまい、最終的に仕事を辞めてしまう可能性が高くなります。介護業界はこの少子高齢化社会の中で非常に重要な産業です。こうした人手不足を解消するための施策を各介護施設では思考を凝らしていく必要があります。

介護業界の人手不足の対策について

介護業界の深刻な人手不足を解消するために、多くの介護施設で解決に向けた対策を立てています。ここからは具体的にどのような人手不足対策をしているのか具体例を紹介します。

 

・働きやすい労働環境にするために設備を充実させる

介護現場の従業員が働きやすいように、IT・システムを導入させるなど、介護施設を充実させることを実施しています。介護の業務は現場の作業の他にも、日報や管理業務などがあります。なるべく事務的な仕事の負担を軽く、効率よくするために、設備を充実させることをしています。

 

・外国人介護人材の受け入れ

昨今の急速なグローバル化に伴って、外国人を受け入れる介護業界にも拡大しています。2020年夏までにベトナムから1万人の介護人材が技能実習制度を通して日本で働くことができるように政府間で合意がありました。外国人介護人材の受け入れは重要になっていくと考えられています。

 

・介護福祉士資格取得の推奨

介護福祉士は社会福祉専門職の介護に関する国家資格であり、取得すると仕事の幅や給料の待遇も変わってきます。介護福祉士の養成学校に通っている間は5万円、入学と卒業時に20万円を借入れをすることができます。国家資格に合格して介護職で5年働けば返済が免除されます。

 

・介護職のイメージアップに向けた施策を立てる

介護職のイメージを上げるために広報やPRにも力を入れる必要があります。政府の後押しで2019年10月に実施された増税の公費の使途として、勤続10年以上の介護福祉士に月額8万円相当の処遇改善を行うと発表しています。こうした良い施策があるにもかかわらずなかなか浸透していないのが現実です。介護職の処遇改善を広くアピールするためにもイメージアップをするべきです。

介護業界の人手不足の解決方法

介護業界の人手不足を解決させるためには、先の項目でも取り上げたような施策を行うことはもちろんのこと、人間関係改善をする施策を立てると良いでしょう。介護業界の離職で一番多い原因は人間関係によるものです。職場の人間関係を改善させるためにも相談窓口を設けることが大切です。

 

介護労働安定センターが行った調査によると、相談窓口がない事業所は労働条件に関する悩みが多いという結果が出ています。職場での人間関係について、特に悩み、不安、不満などは感じていないと答えた人のうち、相談窓口のある介護事業所で働いている人が42.1%に上ったのに対して、相談窓口がない人は22.9%にとどまりました。

 

職場を支えているのは、その職場に勤めている従業員です。職員が何か問題に直面した時に気軽に相談ができる環境かどうかで人間関係の問題を減らすことができます。また、職場でのちょっとした気づきも得られることができるので、労働環境の改善にもつながります。

人手不足を解消できた事例について

この章では、実際に人手不足解消の取り組みをしたことで、人手不足を解消できた事例について紹介していきます。

 

・外国人の受け入れ

東京都の有料老人ホームでの事例です。

外国人労働者を受け入れる前はギリギリの人員で職場を回していました。しかし、年々採用は難しくなってきており、職員の勤続年数も伸び悩んでいました。外国人労働者を受け入れることで、採用も増え、実際に働いてもらうと、想像以上に仕事熱心に働いてくれました。

 

・見守りシステムの導入

神奈川県のグループホームの事例です。

居室数の多いグループホームで、夜間巡回に時間や工数がかかっていました。業務効率や危険察知の点で問題が多かったため、見守りシステムを導入しました。見守りシステムにはフロア全室の状況がモニターでわかるようになっており、アラート機能もついているので、巡回数の削減や未然防止の点で効果を発揮しました。

 

・資格取得支援

大阪府の有料老人ホームでの事例です。

職員の定着や介護の質の向上に課題を感じている介護施設でした。これまではスキルアップやキャリアアップは個人任せにしていましたが、講師出張型の実務者研修ができることと助成金が使えることで導入しました。

講師出張型の実務研修で職員の負担も少なく、キャリアアップをすることができました。

今後の介護業界の見通しについて

今後の介護業界は、ますます少子高齢化社会の影響を受けることで仕事量は増えますが、人手不足の傾向は続くことでしょう。少子高齢化は社会的なトレンドであるため、ますます仕事の厳しさが増してくることは間違いないでしょう。こうした現実が見えてきているなか、人を増やす以外の施策も考えていく必要があります。

 

ITシステムの導入や外国人人材の受け入れなどを積極的に行うことは必要不可欠です。日本の若い人口が増える傾向にないからこそ、仕組みや制度を活用して対策を立てることが大切です。人手不足の流れが止まらないという現実を受け止めて、いかに対策を立てていけるかが、重要なポイントになってきます。

まとめ

今回の記事では介護業界の人手不足に関する原因と対策についてまとめました。今回の記事のポイントは以下の通りです。

・介護業界が人手不足になっている原因は、少子高齢化社会。

・介護業界の人手不足を解決するためには、働きやすい環境作りが大切。

・介護業界の人手不足となる介護施設では、人間関係がきっかけで離職することが多い。人間関係での離職を防ぐためにも相談窓口を職場に設けるとよい。

 

少子高齢化がますます拡大してくる日本の中で、介護業界はますます産業としての重要性が増してきます。少子化により、ますます働き手が少なくなってくるのは目に見えています。こうした課題を解決させるためにもITシステムの導入や外国人労働者の受け入れは必須になってきます。

 

働き手が減っていく一方で、要介護者が増えてくる日本において、日本人の労働者だけではなく、さまざまな方法を活用しながら解決に導いていく必要があります。今後の日本の介護業界ではこうした工夫を凝らして職場作りを目指していかなくては立ち行かなくなる時がきます。

 

今回の記事で紹介した解決策やその事例で、今後の皆さんの働く環境作りに役立てれば嬉しいです。