この記事を要約すると・・・・

  • 経理処理の発見と修正申告の必要性について
  • 営業権算定方法
  • 専務は使用人兼務役員になれるのか
  • 取引関係のない相手先への貸付金

こんにちは、飲食店向け税理士の佐藤です。
今回は「経理処理が見つかった場合は必ず修正申告すべきか」「営業権、のれん代金の金額が妥当かどうかはどうやって判断するか」「会社のナンバー2である専務を使用人兼務役員にできるのか」「社長の友人に会社として貸付をして貸倒になったらどうする?」という経営者向けに書いてみました。しっかり読めば、修正申告の手間を省けるかもしれませんし、M&A等の際ののれん代金の妥当性を自ら試算できますし、貸倒損失への造詣が深くなります。

過去の経理ミスが今年発覚!!

  • 与謝野鉄幹等の文人をカバーする文芸サイト運営会社です。過去3年ほどに渡った経理処理ミスが見つかったのですがこの場合は必ず修正申告が必要でしょうか?

原則は発生した過去に戻る!!

    

★過年度の経理ミス発覚!!

●どんな会社でも本当によくあることです。  税務調査で見つかることもあるでしょうが、自社の日常の  中で、過年度の処理ミスに気づくこともしばしば・・・。 ●過年度に損金計上すべき項目が仮払金のままで残ってる。  過年度に雑収入計上すべき項目(税金還付等)が仮受金で残ってる。

★どうやって対応するか??→原則処理

●過去の各事業年度の収益費用の話です。過去の年度の課税所得を  再計算すべきです。  ↓  所得増額になるならば修正申告、減額になるならば更正の請求になります。  ちなみに更正の請求は申告書提出期限から1年以内のみOKです。  (1年を超えてしまうと上申書を提出する方法以外はないと思います) ●上記が原則ですが、実務ではこんな手間なことを行っていないケース  も多々見受けられます。修正申告が必要なケースでは、税務署も  それなりにうるさいのでかなり慎重に行うべきですが、税額が変わらない  場合等では、当期でこそっと修正するような事例もあると思われます。  会社判断にはなりますが・・・・・

営業権って算定するのは難しい?

  • 橋下さんを個人的に応援している大阪の印刷会社です。先般、債務超過の同業者から会社を買ってくれないか?といわれました。営業権がどうのこうのと言われてますが計算は簡単でしょうか?

唯一つの定められた方法はありません!

    

★債務超過の会社を有償で購入するケースは最近多い!

●債務超過の会社の場合は、この会社への経済的利益の贈与等として寄付金課税  のリスクが生じます。ただし、超過収益力(営業権)が客観的に算出されるので  あれば、課税問題は生じないと考えられます。  ↓  営業権は有償で譲り受けor合併により取得したものに限りB/S計上可能です。  税務上は5年償却となっています。  ↓  営業権=超過収益力の取得価格の算定方法は色々あります。  ↓  ●株価基準法  ●過去数年間の平均利益を基準とする方法  ●純資産額を基準とする方法(時価or簿価)  ●過年度及び将来計画の超過利益を資本還元する方法  ↓  合理的であれば、どの方法を採用してもOKです。  

★相続税法で参考例

●営業権評価額=超過利益額×営業権持続年数(10年)に応じた複利年金現価率(7.912)  ↓  超過利益額=平均利益額×0.5-企業報酬額-総資産額×基準年利率(国税庁発表)  ↓  平均利益額=過去3年間の所得金額を基礎に調整を加えます。   ●上記のような方法で合理的な営業権が算定されます。  ↓  譲渡価額≧営業権評価額の場合、寄付金認定のリスクが生じます。  譲渡価額≦営業権評価額の場合、受贈益認定のリスクが生じます。

専務は使用人兼務役員になれない?

  • 東国原さんもよく来てくれる飲食店を父親の代から経営しています。私はなぜかみんなから専務と呼ばれます。別に定款や取締役会で決まったわけではないのですが、いつのまにかそうなっています。私は使用人兼務役員になれないのでしょうか?

形式的には難しいでしょう!!

    

★形式的にも専務や常務という場合

●専務取締役や常務取締役とは、定款等の規定or株主総会or取締役会の  決議によって、専務や常務としての職正上の地位が付与された役員  をいいますね。(形式的な専務や常務)  ↓  使用人兼務役員は、あくまでも使用人としての職制上の地位を有している  わけですから、上記の専務取締役等は使用人兼務役員には該当しません!  ↓  専務等は、会社内部の主要な地位に位置しており、対外的にも会社を  代表すると思われてもごく自然であり(代表権がなくとも)、表見代表者と  しての責任を負うわけです。これらの人が、使用人兼務役員というのは  どう考えても辻褄が合わないのです。  

★呼び名だけが専務や常務という場合

●小さい同族企業でよくあるケースかもしれません。初代社長の息子を  いつの頃からか専務と呼び出して、それが通称になっているような  ケースですね。  ↓  こういった中小企業では、法人の組織上の地位が明確ではないケースが  圧倒的に多いです。  また、定款や総会や取締役会の決議等で職制上の地位が明確に定められて  いるわけでもない!(ことが非常に多い・・・)。  ↓  言ってみれば、「自称:専務」的なケースも多いんですね。  こういう場合にも上記の形式論を当てはめるのも実情に即さないので、  実態判断になると思われます。  ↓  実態として、使用人としての職制上の地位があるかどうか、役員としての  従事の実態はどうか、このあたりを総合判断することになるでしょう。  ↓  <注>:みなし役員に形式的に該当するかどうかはしっかり確認しましょう!

社長の友人の会社への貸付が貸倒れた!

  • 小笠原さんのファンでかなりの熱狂的な野球ファンでもある当社の社長が友人の会社へ貸付を行いました。うちの会社名義で行ったのですが、その友人の会社は破産し貸倒損失を計上したいと思っています。これって可能でしょうか?

実態判断になるでしょう!

    

★社長の個人的な友人が経営する会社への貸付

●中小企業ならば、実によくある話でもあります。  飲食店向け税理士としてもかなりの事例がある話です。  判断は実態ベースになります。もっと言うと、法人として貸付ける  ことに経済合理性があるかどうか、この点がポイントになります。  ↓  法人と相手方の会社との関係ですね。これが大事です。  ↓  一般的には、相当程度の経済的メリットがなければ、無担保で貸付を  行う会社はありませんね。  もっと言うと、小額しか取引のない先に貸付を行うこと自体、経済的  合理性があるとは言い難いのが現状です。 ●上記を前提にして税務署は貸付金、貸倒損失の判断を行ってくると  思われます。

★取引数の大小が一つのポイントになります

●仮に、貴社の経営に関係のない相手先に貸付けたものであれば、  実質的には社長が貸付けたものとして扱われても抗弁しにくいですね。  ↓  この場合の貸倒損失は、会社の損金として認められない可能性が  きわめて高いと考えられます。  ↓  とはいえ、形式的な契約は、貴社と相手方の会社で生じているわけです。  ですので、この形だけ見れば、貸倒損失は生じるのですが、その見合い  として、貴社には社長への求償権も発生します。  つまり、結果として、貴社には損金は発生しないということになります。  ↓  この求償権、貴社が実行しない場合には、社長への給与として扱われる  ことになると思われます。  ↓  つまり、多くの取引がない会社への貸付というのは、経済合理性が  ないとみなされる可能性が非常に高く、かなりの注意が必要になります。