この記事を要約すると・・・・

  • 荷為替手形の意味と会計処理
  • 輸出売上の計上基準
  • 輸出売上で前受金がある場合

こんにちは、SE・インターネット関連・IT企業向けの税理士の佐藤です。
今回は「荷為替手形って何なの?」「輸出売上の売上計上基準は法律で決まっているの?」「前受金としてお金を貰った場合には為替差損益はどうなるの?」という経営者向けに書いてみました。しっかり読めば、荷為替手形をうまく活用した貿易が可能になりますし、輸出売上のタイミングや前受金等による為替差損益の会計処理も適切にできるようになります。

信用状なし荷為替手形ってどういうことですか?

  • 五大湖周辺のサーモンを輸入する会社を起業する予定です。この場合に信用状なし荷為替手形の利用を薦められました。これはどういうことなのでしょうか?

リスクは高いがコストは安い決済方法!!

    

★信用状なし荷為替手形の概要

●輸入者の信用状況が良好で代金回収リスクが低い場合には、  信用状なしの荷為替手形による決済を行うケースもあります。  ↓  逆に言うと、代金回収上の観点からはリスクが大きいということです。     ①支払渡し(D/P)  手形の支払いと引換えに、船積書類等を輸入者に引き渡します。 ②引受渡し(D/A)  手形の引受けと引換えに、船積書類等を輸入者に引き渡します。

★信用状なし荷為替手形の流れ(日本側から輸出する場合)

●日本の輸出者と海外の輸入者が、D/P、D/A決済による契約を締結。 ↓ ●輸出者は貨物を船積みし、船会社から船荷証券を受け取ります。 ↓ ●輸出者は取引のある為替銀行に、D/P、D/A決済の荷為替手形を振り出し、  船荷証券、海上保険証券、インボイス等を添付して、為替銀行に荷為替手形  の買取りを依頼する。 ↓ ●為替銀行は荷為替手形を買い取り、輸出者に代金を支払います。 ↓ ●本邦銀行は輸入者側の現地銀行に荷為替手形の取立てを依頼します。 ↓ ●輸入者側の現地銀行は、輸入者に荷為替手形の支払いの呈示等を行います。 ↓ ●輸入者は支払等を行い、必要書類を受け取ります。 ↓ ●輸入者側の現地銀行は本邦銀行に支払いを行います。 ↓ ●輸入者は必要書類と交換に貨物を引き取ります。

輸出売上の計上基準は?外貨建資産の換算は?

  • エビとヤドカリの養殖を行っています。今後アジア各国に輸出する方向で検討しています。輸出売上の計上基準はどうなるのでしょうか?また外貨建ての売掛金等は決算時に換算し直す必要があるのでしょうか?

どちらも貿易取引では大事です!

    

★輸出売上における売上計上基準

●出荷基準  通関や船積みとは関係なく、出荷日に売上を計上する方法。  国内取引と同様ですね。 ●通関基準  通関日に売上計上する方法。  通関日は輸出申告書記載の日付によります。 ●船積日基準(実務では最もメジャー)  船積みした時点で売上計上する方法。  船積日は船荷証券に記載された日付によります。  ↓  船積時点で商品引渡義務が履行完了したと認められる等の理由で  最も妥当といわれています。  ↓  また、船積後には、取引銀行に輸出者が荷為替手形の買取を依頼して  代金回収できることになるので(代金請求権が船積時点で確定)、  この点からも妥当といえます。 ●船荷証券等作成日基準  船積みを完了し船荷証券等を入手した段階において、  船荷証券等の作成日に売上を計上する方法。 ●揚地条件受渡日基準  揚地(船荷を陸揚げする場所)条件の受渡日に売上計上する方法。

★外貨建資産等の法定換算方法(税務上)

●外貨建資産等の決算時換算方法  ↓  届出を出さなければ法定換算方法が適用されます。      ■短期外貨建債権債務の決算時法定換算方法   →期末時換算法  ■長期外貨建債権債務の決算時法定換算方法   →発生時換算法  ■短期外貨預金の決算時法定換算方法   →期末時換算法  ■長期外貨預金の決算時法定換算方法   →発生時換算法 弊税理士事務所のSE・システムエンジニア・インターネット関連・IT企業のクライアントが海外取引を行うときも売上計上のタイミングで税務調査で揉めた経験があります。タイミングは非常に重要なテーマですね。

荷為替手形の会計処理(輸出取引)はどうなる?

  • アマゾン川の研究機関です。ブラジルの会社に研究設備等を輸出する予定です。荷為替手形の会計処理はこの場合はどうなるのでしょうか?

信用状があるかないかで変わります!

    

★荷為替手形の会計処理(輸出取引)

●輸出者の代金回収の一方法  荷為替手形を振り出し銀行に買取or取立を依頼する。  (荷為替手形を取り組むという)

★信用状付一覧払いで買取り扱いの会計処理

●2010年6月5日:船積完了(為替レート@102円)  商品5万ドルの船積完了(船積完了日を売上計上日としている)。  ■売掛金 510万円 / 売上 510万円 ●2010年6月7日  船荷証券等を銀行に呈示し、信用状に基づき荷為替手形を取り組んで買取依頼。  ■輸出手形 510万円 / 売掛金 510万円 ●2010年6月9日:(一覧払手形買取レートは@105円)  銀行が手形を買い取り入金あり。  ■現預金 525万円 / 輸出手形 510万円           / 為替差益 15万円                      

★信用状付期限付払手形で買取り扱いの会計処理

●手形条件を一覧後60日後払手形とする。  期限付払=ユーザンス。   ●2010年6月5日:船積完了(為替レート@102円)  商品5万ドルの船積完了(船積完了日を売上計上日としている)。  ■売掛金 510万円 / 売上 510万円 ●2010年6月7日  船荷証券等を銀行に呈示し、信用状に基づき荷為替手形を取り組んで買取依頼。  ■輸出手形 510万円 / 売掛金 510万円 ●2010年6月9日:(為替レートは@107円、60日ユーザンス手形買取レートは@103円)  銀行が手形を買い取り入金あり。  ■現預金 515万円    / 輸出手形 510万円   手形売却損 20万円  / 為替差益 25万円  ↓  手形売却損は、@107円-@103円分の差  為替差益は、@107円-@102円の差    

★信用状なし期限付払手形で買取り扱いの会計処理

●2010年6月5日:船積完了(為替レート@102円)  商品5万ドルの船積完了(船積完了日を売上計上日としている)。  ■売掛金 510万円 / 売上 510万円 ●2010年6月7日  船荷証券等を銀行に呈示し、荷為替手形を取り組んで買取依頼。  ■輸出取立手形 510万円 / 売掛金 510万円 ●2010年12月31日:(決算日:為替レートは@99円)  ■為替差損 15万円 / 輸出取立手形 15万円   ●2011年1月17日:決済(取立完了、口座入金あり。当日レートは@101円)  ■現預金 505万円    / 輸出取立手形 495万円              / 為替差益 10万円

【輸出取引】前受金と掛取引の会計処理はどうする?

  • 広島東洋カープの本拠地に近いところで貿易商社をやっています。輸出取引についてなのですが、前受金がある場合の仕訳ってどうなるのでしょうか?すいません、素人な質問です・・・

為替レートに注意が必要です!

    

★前受金と掛取引の会計処理の概要

●前受金と掛取引の一連の流れはあくまで掛取引なので  決済手段としては外国送金等が利用されます。  (荷為替手形等の輸出手形は使用されないということです!)

★前受金と掛取引の会計処理例

●2010年2月1日に契約。  商品5万ドルの輸出契約を締結。 ●2010年2月10日に1万ドルが前入金(為替レートは@110円)。  ■現預金 110万円 / 前受金 510万円 ●2010年3月1日に5万ドル分の船積完了。(為替レートは@108円)  (船積完了日に売上計上している会社を前提とする)  ■売掛金 432万円 / 売上 542万円(合計で求める)   前受金 110万円 / ●2010年3月31日は決算日(為替レートは@105円)。  ■為替差損 12万円 / 売掛金 12万円 ●2010年4月30日は決済日で4万ドル入金あり(為替レートは@107円)  ■現預金 428万円 / 売掛金 420万円           / 為替差益 8万円