社長が辞めた!役員退職金ってどうやって計算する?
この度創業者である社長が引退することになりました。退職金を払うのですが あまり高く払うと問題があると聞きました。どうやって計算すればいいでしょうか?
役員退職金は高すぎると費用計上できません!
★役員退職金はどうやって計算する?
役員退職金については、基本的には会社の経費とする事ができます。
ただし、「不相当に高額な部分」は経費にすることができません。
ここで、「不相当に高額な部分」とは何かが問題になりますね。
税法では、「従事した期間、退職の事情、同業他社の支給状況に照らし」相当額を超える部分とされています。
でも、これでは抽象的すぎます。 そこで、実務上一般的には「功績倍率法」が用いられる場合が多いです。
★「功績倍率法」は、以下のの算式により求められます。
<退職時の報酬>×<勤続年数>×<功績倍率>
一番の問題は、「功績倍率」ですね。
これに決まった数値はありませんが、代表取締役で2~3、平取締役だと2以下が一般的のようです。
(この数値も絶対的ではないので、状況によっては税務調査で否認されます)
●例えば、月給100万円、勤続20年の社長の場合ですと、
100万円×20年×3(功績倍率)=6,000万円が、経費として計上できる上限となります。
⇒つまり、これ以上の金額部分は会社の経費にならないということです。
★役員退職金を払う際の注意点は?
①支給することが確定した日、又は実際の支給日を含む事業年度で損金経理していること。
②役員退職金規程を作り、功績倍率を決めておくこと
③月額報酬はなるべく高くしておくこと。
④役員退職金の支払が、定款、株主総会及び取締役会の決議に基づいていること。
⑤退任後は、完全に第一線から退くこと。 難しければ、代表権のない会長等に就任させ、報酬額は退任直前の半分以下とすること。
★兼務役員の退職金はどうなる??
社員兼務役員の退職金は、
★社員退職金として支給する部分と
★役員の退職慰労金として支給する部分 の2種類を合算する必要があります。
給与支払いの時点で明確に区別されていれば問題はありませんが、そうでない場合は個々の算定基礎額の割合を会社が決定する必要が出てきます。
実務上は、社員分7割、役員分3割程度が一般的です。(勿論絶対ではありません)
前述した<功績倍率>は、1.2~1.5程度が一般的といえるでしょう。
役員退職金が一度に支払えない!どうしよう?
この度社長が引退するため、役員退職金を支払う予定です。しかし、金額が大きく、今の会社の状況では一度に払えません。どうしたらよいでしょうか?
役員退職金の分割払いは可能です!
★役員退職金はいつ費用計上できるのでしょうか?
商法では、役員退職金を支給する場合には株主総会で金額等を決議しなければならない旨を定めています。
(会社と役員との関係は雇用契約ではなく委任契約となるので、恣意的なお手盛りのリスクがあるためです)
税法でも商法に従っています。
つまり、、、、、 原則は、株主総会で支給決議がされ、支給が確定した年度で損金となります。
しかし、支給日の年度において損金処理することも認めています。 原則は株主総会による確定年度、例外は、支払日の属する年度、という流れです。
★では、退職金を2回に分けて払った場合はどうなるでしょうか??
この場合は、以下の2つとも、認められます。
①確定年度に全額を損金処理し、翌期の支払時は未払金の取崩しとする。
②各年度にの支払いの都度、、その年度の損金とする。
理由は簡単ですね。
上述したように、退職金損金算入時期は確定年度又は支払年度のどちらもOKだからです。
とはいえ、これを利益調整に利用するのはNGです。
例えば、前期は利益がないので退職金ゼロ、今期は利益が出たので3,000万円払います、なんていうのは、リスキーです。
税務調査で指摘されても仕方がないですね。計画的かる短期間で支払を終える努力は絶対に必要になってきます。
<注意!>
退職年金制度を実施している場合、退職年金の支給年度が損金算入時期となります。
つまり、退職時に年金総額を計算して未払金計上しても損金に算入することはできません!
役員ボーナスは経費にならない?
今期はすごい利益になりそうで嬉しいのですが、頑張った役員にボーナスを払おうと思います。でもこれって経費にならないのですか?
役員賞与を経費計上する条件はかなり厳しいです!
★役員賞与を損金算入するには事前の届出が必要です!
役員賞与の損金算入については、支給時期及び支給額をあらかじめ定めていることが大前提になります。
(株主総会等で役員賞与を払う時期と支給額を個々の役員ごとに決めなければなりません)
そして、この通りの時期にこの通りの金額で賞与を支払わなければなりません。
もし少しでも違う日、違う金額で払った場合には、損金計上できないものと考えておくべきでしょう。
税務上、役員賞与の損金算入を認めてもらうためには、事前の届出が必要となります。
この制度のことを「事前確定届出給与」というのですが、この届出の提出期限、および記載内容について細かに決められています。
★事前確定届出給与はいつまでに届ける必要があるのか?
「職務執行開始前」(通常は株主総会の日)か「会計期間開始後3ヶ月」のいずれか早い時期です。
これを管轄の税務署に届けなければなりません。
★届出には何を記載するのか?
記載内容は以下の項目となります
●支給対象者の氏名および役職名
●支給時期および支給期の金額
●支給時期および支給金額を定めた日とそれを定めた機関等
●支給対象者が職務執行を開始する日
●定期同額給与により支給しない理由
●事前確定届出給与以外の給与を支払う場合の支給時期、支給時の金額
●直前の事業年度の給与の支給時期および支給時の金額
●他の役員に対する給与の支給時期および支給時の金額
●その他参考となる事項