この記事を要約すると・・・・
- 外国人雇用は難しいか?
- 延滞金や罰金の会計処理は?
- 金融機関からの融資を受けやすくする方法
- 事業承継で揉めない方法
こんにちは、介護関係を中心とした税理士の佐藤です。
今回は「人手不足で外国人を雇いたい!」「延滞金は経費になるのだろうか?」「銀行からどうしても融資を受けたい」「事業承継で揉めそうな気がする」という経営者向けに書いてみました。しっかり読めば経営の悩みを少し減らせますよ!
外国人を雇用するのって難しいですか?
- 大葉を加工する工場を経営しています。昨今の景気もあって、外国人(ペルー人)を雇用する予定です。注意するポイントは何でしょうか?
手続的にはそんなに面倒ではありません!
★外国人とビザの関係を抑えましょう!
●外国人が日本で就労するには、就労ビザが必要ですね。 ↓ もし、ビザがないとか期限切れだとかになると不法就労です。 ↓ 知ってて雇用した会社も罰せられます。 (3年以上の懲役or300万円以下の罰金) ●留学ビザの外国人はどうなるか。 ↓ 労働自体は可能ですが、労働時間の制限(1週間28時間以内)あり。★外国人雇用の具体的手法
●外国人を雇用する際、ビザやパスポートを確認しコピーしましょう。 ↓ (外国人研修生を除いて)最低賃金法も適用されますし、 労働基準法も全て完全に適用されます。 もちろん、労災保険の加入も必要です。 社会保険や雇用保険も全く同様です。 国籍が違うだけで日本人雇用と同じだと考えましょう。 ●ハローワークへの届出は義務です。 ↓ 外国人を雇用する会社は、雇用状況や採用・離職について届出が必要! (してないと30万円以下の罰金)
延滞金・罰則金・損害賠償金はどう処理する?
- 天津・青島からペット用品を輸入している会社です。社会保険料の滞納によって延滞金を請求されました。これは損金に算入できないですよね??
個別具体的に見ていきましょう!
★社会保険料の延滞金
●国税、これらに係る延滞税、過少申告加算税、無申告加算税、重加算税。 都道府県民税、市町村民税等の地方税、これらにかかる延滞金等。 ↓ これらは、法人税法第55条で損金不算入とされています。 ●雇用保険料、労災保険料、社会保険料等にも延滞金が課せられますが、 これらは、厚生年金保険法等の規定に基づくもの。 ↓ 法人税法第55条で規定されていないので、社会保険料等の延滞金 については、損金算入OKです。★交通違反の罰則金
●役員や使用人に科された罰金等を会社が負担した場合、 法人の費用にはできますが、税務上は損金不算入です。 ↓ ただし、これは、会社の業務遂行に関連して役員や使用人が 科された罰金の場合ですね。 この時は上記の通り租税公課等で費用処理して、税務上は損金不算入。 ↓ しかし、仮に業務に関係なく科された罰金であれば、これは 会社の租税公課として処理できませんね。 この場合や、役員報酬や給与の扱いになるでしょう!★人身事故のよる損害賠償金
●役員or使用人の行為によって他人に損害を与えた場合に支払う損害賠償金。 ↓ □業務遂行に関連するもので、故意or重過失に基づかない場合 →給与以外の損金算入OK! □業務遂行に関連するもので、故意or重過失に基づく場合 □業務遂行に関連しない場合 →役員or使用人に対する債権。 ●人身事故の場合、治療期間も長く、示談成立まで長期に渡るケースが多い。 つまり債務確定までかなりの時間を要し、それまで損金計上できないのは 実情に合わなくなります。 ↓ 自動車による人身事故に係る内払の損害賠償金については、 示談成立等による債務確定前でも支出日の年度で損金算入OKです。 但し、保険金収入予定があれば、その予定を益金算入しなければなりません。 (内払額に達するまで益金算入が必要になります)
金融機関の融資を受けやすくする方法は?
- ミラノやベネチアとアパレル取引をしている会社です。来年大きな融資を受けたいと考えていますが今からできることはありますでしょうか?
ポイントは意識しておきましょう!
★金融機関には格付があります
●金融機関は融資先の会社を格付けします(自己査定&ランク付け)。 ↓ これには定量審査(70%程度)と定性審査(30%程度)の総合評価で 決められることになります。 □定量=数値化できる部分で決算書を中心に審査されます。 □定性=市場や環境や経営者資質等の審査です。 ↓ 結果として、正常先やら要注意先等に分類されるわけです。 ↓ 正常先であれば借入時に問題はありませんが、要注意先等になると 利率も金額も条件も全く変わってきます。つまり、どんな会社で あっても正常先になるべく、格付け努力をしないとダメなんです。★金融機関の格付アップの方法
①DESを行う! 社長の借入金を資本金に振り替えるテクニック。 自己資本比率が増加するので格付アップの方向に働きます。 (均等割の金額や登記費用のデメリット面も考えるべきですが) ②経常利益、営業利益を大きくするのに拘る! 特別損益で計上できる性質のモノであれば、極力特別損益勘定で 計上しましょう。 ③借入金は極力減らすこと! 例えば定期預金と借入金があれば相殺を考えましょう。 その他にも、不要資産があれば売却し極力早めに借入金を消し込む のが得策です。 ④運転資金をしっかり調整する。 一般的に「売掛債権+棚卸資産-仕入債務」で算出されます。 「将来入金-将来支出」的のイメージですね。 ↓ □運転資金を減らしましょう! 一般的な運転資金の計算式というのは、 「売上債権+棚卸資産-仕入債務」で表されます。 タイムラグの関係で、この資金を借入等で賄います。 だからこの運転資金を減らす戦略が格付アップにつながるんですね。 ↓ 売上債権を減らすために代金回収を早くしたり、滞留債権を減らしたり 棚卸資産を減らすために適正在庫を把握したり。 仕入債務を増やすために支払条件を延ばす方向で検討したり。 ⑥会社と銀行の人的関係を大事にする 日常的なコミュニケーションは勿論大事です。 また、決算後には税務申告書を会社から自主的に金融機関に提出すると 喜ばれたりしますね。 私たちは大阪や京都や姫路を中心に、訪問介護やデイサービス等の介護事業者への税理士 サービスを提供していますが、ほとんどのクライアントがやっています。
中小企業の事業承継でモメない方法は?
陸前高田市で水産加工業を営んでいます。兄弟で株を保有しており子供が各々います。事業承継でトラブルにならない方法はありますか?
まずは定款を確認する必要があります!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★まずは自社の定款を確認しましょう。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
最近設立された会社の多くには含まれている文言のはずですが、以下のような 文言が定款に含まれているかを確認しましょう。 --------------------------------------------------------------------- 当会社は、相続その他の一般承継により当会社の株式を取得したものに対し、 当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。 --------------------------------------------------------------------- この条文があれば、相続発生時に、会社は相続人に対して株式の売り渡し請求 ができ、株式を買い取ることができます。これは権利です。相手方は断れません。 つまり、経営者一族以外への株式の分散を防げます。 (買取価格は時価ベースでの計算になりますが・・・) ↓ 権利=行使するかどうかは会社の自由。 しかし、この定款の条文がなければ権利はありません。 つまり、相続人との相対交渉しか道はなく、相続人は勿論拒否もできます。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★兄弟で50%ずつ株式保有しているのは危険です! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●兄弟にはそれぞれ子供がいるとすると、その株式は放っておくと、 各々の子供に受け継がれていき、疎遠な人々の株主集団になります。 ●この解決策として、上記の定款戦略がありますが、それができない場合は 以下のような方法を採るしかないでしょう。 ①株を一方に贈与→贈与税リスクあり! ②株を一方に売却→金額が高額になるリスクあり! ③遺言を書き、一方に全てが渡るように手配→親族を交えた大袈裟な話に! ④兄弟間で死因贈与契約→これが一番マシ。 ●死因贈与契約により、どちらかが死んだらその株を他の一方に贈与するというもの。 (相続税対象になります) あくまで兄弟間の契約なので、兄弟の合意だけがあれば成立するので遺言に 比べると話が小さくまとまりやすいです。 ●株主の分散は中小企業にとってはとんでもなく大きな問題です。 加えて、株式の事業承継資金も同程度の大きな問題です。