Ⅰ 給料・社会保険・源泉税の処理の目次
- 従業員給与の源泉税の預かりと納付
- 役員給与の源泉税の預かりと納付
- 税理士・弁護士等の源泉税の預かりと納付
- 労働保険料の預かりと納付
- 社会保険料の預かりと納付
- 賞与の処理
- 退職金の処理
Ⅱ 仕訳例
1 従業員給料等の源泉税の預かりと納付
(1)例示
従業員給料100万円を、源泉所得税5万円を差し引き、従業員に給料を支払った。
(2)仕訳
◆給料支払時
(借方) (貸方)
給料 1,000,000 *1 | 現金預金 950,000 |
預り金 50,000 *2 |
*1 給料手当は、総額で計上します。時間外手当も給料手当と同様に処理します。
*2 従業員から預かった源泉所得税は「預り金」(負債)とします。
◆預かっていた源泉所得税の納付時
(借方) (貸方)
預り金 50,000 | 現金預金 50,000 |
(3)仕訳のポイント
・従業員の給与等から差し引かれる源泉所得税、社会保険料等は、従業員が負担するものです。会社が代わって、徴収しているものですので、会社の経費にはならず、預り金で処理します。
・源泉徴収した所得税や地方税は、翌月10日までに納付します。納付したときに、預り金を取り崩します。
・給与支給人数が10人以下の会社は、半年ごとの納付(1月、7月)でよいという特例があります。(納期特例)
2 役員給与の源泉税の預かりと納付
(1)例示
役員給与100万円を、源泉所得税5万円を差し引き、役員に支払った。
(2)仕訳
◆役員給与の支払時
(借方) (貸方)
役員給与 1,000,000 *1 | 現金預金 950,000 |
預り金 50,000 *2 |
*1 適正な額の役員給与は、損金に計上できます。
*2 役員から預かった源泉所得税は「預り金」(負債)とします。
◆預かっていた源泉所得税の納付時
(借方) (貸方)
預り金 50,000 | 現金預金 50,000 |
(3)仕訳のポイント
・役員給与は、①定額同額給与、②事前確定届出給与、③利益連動給与に区分されます。
・定額同額給与は、毎月、一定額を給与として支払います。定款または株主総会の承認による支給限度額の範囲でかつ不相当に過大でない場合には、損金となります。
3 税理士・弁護士等の源泉税の預かりと納付
(1)例示
税理士報酬108,000円を、源泉所得税1万円を差し引き、税理士事務所に支払った。
(2)仕訳
◆税理士報酬の支払時
税抜方式
(借方) (貸方)
支払報酬料 100,000 | 現金預金 98,000 |
仮払消費税 8,000 | 預り金 10,000 *1 |
*1 税理士から預かった源泉所得税は「預り金」(負債)とします。
税込方式
(借方) (貸方)
支払報酬料 108,000 | 現金預金 98,000 |
預り金 10,000 *1 |
*1 税理士から預かった源泉所得税は「預り金」(負債)とします。
◆預かっていた源泉所得税の納付時
(借方) (貸方)
預り金 10,000 | 現金預金 10,000 |
(3)仕訳のポイント
・税理士報酬等から差し引かれる源泉所得税は、税理士等が負担するものです。会社が代わって、徴収しているものですので、会社の経費にはならず、預り金で処理します。
・源泉徴収した所得税は、翌月10日までに納付します。納付したときに、預り金を取り崩します。
・給与支給人数が10人以下の会社は、半年ごとの納付(1月、7月)でよいという特例があります。(納期特例)
4 労働保険料の預かりと納付
(1)例示
従業員給料100万円を、源泉所得税5万円、労働保険料(雇用保険料3千円)を差し引き、従業員に給料を支払った。労働保険料申告書により、労働保険料10万8千円を納付した。
(2)仕訳
◆給料支払時
(借方) (貸方)
給料 1,000,000 *1 | 現金預金 947,000 |
預り金 50,000 *2 | |
法定福利費 3,000 *3 |
*1 給料手当は、総額で計上します。時間外手当も給料手当と同様に処理します。
*2 従業員から預かった源泉所得税は「預り金」(負債)とします。
*3 従業員から預かった雇用保険料は「法定福利費」とします。会社が納付する「法定福利費」の合計から、従業員負担分を差し引く仕訳を作成します。源泉税と同様に「預り金」として処理することも可能ですが、ここでは、実務上簡便的に処理します。
◆労働保険料の納付時
(借方) (貸方)
法定福利費 108,000 | 現金預金 108,000 |
(3)仕訳のポイント
・労働保険料は、4月1日から翌3月31日の保険年度分の概算保険料を前払いし、保険年度終了後に確定保険料を計算し、概算と確定の差額を次年度の概算に加減算して納付します。
・労災保険と雇用保険を合わせて労働保険といい、労災保険料は全額会社負担ですが、雇用保険料は会社と従業員が負担します。
5 社会保険料の預かりと納付
(1)例示
従業員給料100万円を、源泉所得税5万円、労働保険料(雇用保険料3千円)、社会保険料(厚生年金保険料8万円、健康保険料4万5千円)を差し引き、従業員に給料を支払った。納入告知書に基づいて、厚生年金保険料、健康保険料などを納付した。
(2)仕訳
◆給料支払時
(借方) (貸方)
給料 1,000,000 *1 | 現金預金 947,000 |
預り金 50,000 *2 | |
法定福利費 3,000 *3 |
*1 給料手当は、総額で計上します。時間外手当も給料手当と同様に処理します。
*2 従業員から預かった源泉所得税は「預り金」(負債)とします。
*3 従業員から預かった雇用保険料3,000、厚生年金保険料80,000、健康保険料45,000は「法定福利費」とします。会社が納付する「法定福利費」の合計から、従業員負担分を差し引く仕訳を作成します。源泉税と同様に「預り金」として処理することも可能ですが、ここでは、実務上簡便的に処理します。
◆労働保険料の納付時
(借方) (貸方)
法定福利費 108,000 | 現金預金 108,000 |
(3)仕訳のポイント
・労働保険料は、4月1日から翌3月31日の保険年度分の概算保険料を前払いし、保険年度終了後に確定保険料を計算し、概算と確定の差額を次年度の概算に加減算して納付します。
・労災保険と雇用保険を合わせて労働保険といい、労災保険料は全額会社負担ですが、雇用保険料は会社と従業員が負担します。