食事の支給に対する所得税の規定

【所得税が非課税となる場合の規定】

 仕出弁当や社員食堂等を利用して、役員や使用人に食事を現物支給する場合には、次の二つの要件をどちらも満たしていれば、所得税は課税されません。

(1) 役員や使用人が「食事の価額」の半分以上を負担していること。

(2) 次の金額が1か月当たり3,500円(税抜き)以下であること。
(食事の価額)-(役員や使用人が負担している金額)

【残業、宿直、日直者に対する食事の提供(所得税非課税規定)】

 残業又は宿直若しくは日直をした者に対し、食事を現物支給する場合には、所得税が非課税となります。

(ただし、上記の勤務は、その者の「通常の勤務時間外」における勤務としてこれらの勤務を行った場合に限ります。)

【深夜勤務者の食事手当(所得税の非課税規定)】

以下の全てを満たしている場合には、現金支給される「夜食手当」は、所得税が非課税となります。

①正規の勤務時間の一部又は全部が深夜(午後10時から翌日午前5時)に及ぶいわゆる深夜勤務者であって
②夜食の現物支給ができないことにより、現金支給される「夜食手当」で
④支給額が勤務1回につき300円以下の場合

【所得税が課税される規定】

 現金で食事代の補助をする場合には、、補助をする全額が給与として所得税が課税されます。

ただし、前述の規定(深夜勤務者に夜食の支給ができないため現金支給する夜食手当)に該当する場合には、所得税が非課税となります。

 

 

食事を現物支給する場合の規定

食事の現物支給とは

「仕出弁当を社員に提供する場合」「社員食堂等を設置して、社員に食事を提供する場合」などのように、会社が食事の現物を社員に提供することをいいます。

毎月3,500円を社員に食事代として現金で支給することは、「食事の現金支給」であり、「食事の現物支給」には該当しません。

 

食事の現物支給についての原則的な規定

食事の現物支給について所得税が非課税となるには、以下の両方の要件を満たしていることが必要となります。
①役員や使用人が「食事の価額」の半分以上を負担していること。
②「会社が負担する食事の価格」は、1か月当たり3,500円(税抜き)以下であること。

例示

以下のような場合には、「現物支給の食事に係る会社負担分」(=食事の価額-役員・従業員負担分)について、所得税は非課税となります。

例示1

「食事の価額」が1日あたり500円であり、会社が1日あたり175円を負担して、従業員に食事を現物支給している場合(1カ月間の支給日数は20日)。

【会社負担分、役員・従業員負担分】
①会社の負担額⇒ @175円 × 20日 = 3,500円  ≦ 3,500円

②従業員の負担分⇒ @(500円- 175円) × 20日 = 6,500円  ≧10,000円×  1/2

【取り扱い】
原則規定を満たしますので、会社の負担額3,500円は、従業員への給与として扱う必要がなく、所得税が課税されません。

例示2

 「食事の価額」が1日あたり300円であり、会社が1日あたり150円を負担して、従業員に食事を現物支給している場合(1カ月間の支給日数は20日)。

【会社負担分、役員・従業員負担分】
①会社の負担額⇒ @150円 × 20日 = 3,000円   ≦ 3,500円

②従業員の負担分⇒ @(300円- 150円) × 20日 = 3,000円  ≧6,000円×  1/2

【取り扱い】
原則規定を満たしますので、会社の負担額3,000円は、従業員への給与として扱う必要がなく、所得税が課税されません。

 

現物支給する食事の価額とは

①「仕出し弁当」などを取り寄せて支給している場合には、「業者に支払う金額」が「食事の価額」となります。

②「社員食堂などで会社が作った食事」を支給している場合には、食事の材料費や調味料など食事を作るために「直接かかった費用の合計額」が「食事の価額」となります。

 

原則規定の要件を満たしていない場合

原則規定の要件を満たしていない場合には、「会社が負担する食事の価格」が給与として取り扱われ、この部分についての所得税が課税されます。

このため、原則規定の要件を満たしていない場合には、「会社が負担する食事の価格」について、源泉徴収の必要があります。

 例示

以下のような場合には、「現物支給の食事に係る会社負担分」(=食事の価額-役員・従業員負担分)については、役員・従業員への給与として取り扱われ、所得税が課税されます。

例示1

「食事の価額」が1日あたり500円であり、会社が1日あたり250円を負担して、従業員に食事を現物支給している場合(1カ月間の支給日数は20日)。

【会社負担分、役員・従業員負担分】
①会社の負担額⇒ @250円 × 20日 = 5,000円 > 3,500円

②従業員の負担分⇒ @(500円- 250円) × 20日 = 5,000円

【取り扱い】
・会社の負担額が、1カ月間で3,500円を超えますので、会社負担額5,000円は、従業員への給与として取り扱われ、所得税が課税されます。

例示2

 「食事の価額」が1日あたり300円であり、会社が1日あたり175円を負担して、従業員に食事を現物支給している場合(1カ月間の支給日数は20日)。【会社負担分、役員・従業員負担分】
①会社の負担額⇒ @175円 × 20日 = 3,500円

②従業員の負担分⇒ @(300円- 175円) × 20日 = 2,500円 < 3,000円

【取り扱い】
・従業員の負担額が、「食事の価額」の半分未満となりますので、会社負担額3,500円は、従業員への給与として取り扱われ、所得税が課税されます。

 

食事の現物支給についての例外的な規定

食事の現物支給を行う場合には、上記に記載したとおり、原則規定の要件を満たしているか否かによって、役員・従業員への給与として取り扱われるか否か(所得税が課税されるか否か)が決まります。

 ただし、「通常の勤務時間外」における勤務として、残業又は宿直若しくは日直をした者に対し、食事を現物支給する場合には、所得税が非課税となります。

したがいまして、上記のような食事の現物支給については、「役員・従業員の負担額がゼロ(全額会社負担)」であっても、当該食事の価額については、役員・従業員への給与としては扱われず、所得税が課税されません。

 

食事代金を現金支給する場合の規定

 食事代金を現金で支給する場合の原則規定

食事代金を補助するために、会社が食事代金を現金で役員・従業員に支給する場合には、「補助をする全額(=会社が負担する金額)」が給与として所得税が課税されます。

この場合には、「補助をする全額(=会社が負担する金額)」に対して源泉徴収を行う必要があります。

例示
 「食事の価額」が1日あたり500円であり、食事手当として会社が250円を、従業員に現金支給している場合(1カ月間の支給日数は20日)。【食事手当、役員・従業員負担分】
①食事手当⇒ @175円 × 20日 = 3,500円

②従業員の負担分⇒ @(500円- 175円) × 20日 = 6,500円

【取り扱い】
・食事手当として「現金支給」している場合には、食事手当3,500円については、従業員への「給与」として扱われ、所得税が課税されます。

 

 食事代金を現金で支給する場合の例外規定

食事代金を現金で支給する場合には、原則として、上記に記載したとおり、役員・従業員への給与として取り扱われます。

ただし、以下の全てを満たしている場合には、現金支給される「夜食手当」は、所得税が非課税となります。

①正規の勤務時間の一部又は全部が深夜(午後10時から翌日午前5時)に及ぶいわゆる深夜勤務者であって
②夜食の現物支給ができないことにより、現金支給される「夜食手当」で
④支給額が勤務1回につき300円以下の場合

したがいまして、上記のような場合については、「食事代金を現金で支給した場合」であっても、当該食事の価額については、役員・従業員への給与としては扱われず、所得税が課税されません。

1回あたり300円を超える場合

1回あたり300円を超える「夜食手当」を支給した場合には、「夜食手当」として会社が支給した金額の全額について、所得税が課税されます。

「夜食手当-300円」の部分についてだけ、所得税が課税されるものではありませんので、注意が必要となります。