日々働いている人の中には、
「雇用保険と社会保険は何が違うのだろうか」
「毎月保険料が引かれているけど仕組みが分からない」
「雇用保険や社会保険に加入していないかもしれない」
以上のような疑問や悩みや抱えている人もいるのではないでしょうか。
これまで長年働いてきたが「保険は難しそう」「でも今更聞けない」という人もいるはずです。
そこで、今回の記事では、雇用保険と社会保険の仕組みや違い、保障される内容についてまとめました。
保険についての知識がない人にもわかりやすい内容になるよう、かみ砕いてお伝えしていきます。
最後までお読みいただければ、雇用保険や社会保険に関する悩みが解決できるはずです。
ぜひ、参考にしてみて下さい。
雇用保険と社会保険の関係性
雇用保険と社会保険には関係性があります。
社会保険とは「国が国民の生活を老後まで保障するための制度」です。
規定の条件を満たした会社や従業員は、加入する義務があります。
社会保険の内容は以下の5つです。
- 健康保険
- 介護保険
- 厚生年金保険
- 雇用保険
- 労災保険
つまり、雇用保険とは、社会保険を構成する要素の1つなのです。
しかし、これは社会保険を広い意味で捉えた考え方で「広義の社会保険」と呼ばれています。
実際のところ、健康保険、介護保険、厚生年金保険の3つを「社会保険」とし、雇用保険と労災保険を「労働保険」として、2つの保険は別のものとして捉えるのが一般的です。
上記のような社会保険の捉え方を「狭義の社会保険」と呼びます。
なぜこのような2つの捉え方が存在しているのでしょうか。
その理由は、社会保険と労働保険、それぞれを過去に管轄していた機関が異なるからです。
以前は社会保険は「厚生省」、雇用保険は「労働省」が管轄していました。
しかし、2001年に厚生省と労働省が統合され「厚生労働省」に生まれ変わってから、全ての社会保険を担うようになったのです。
過去に分類していたなごりが現在も残っているのですね。
雇用保険と社会保険の違い
ここからは、雇用保険と社会保険の違いについて、具体的な内容を示し解説していきます。
保障する内容が違う
雇用保険と社会保険。
どちらも国が国民の生活を守るための制度である点には変わりはありませんが、保障の内容が異なります。
- 雇用保険・・・国民が失業してしまった時の生活に対する保障や再就職の支援
- 社会保険・・・国民が日常生活を送る上での病気やけが、老後に対する保障
雇用保険は文字通り「雇用」について、社会保険は「年金」と「医療」についての保障が目的です。
以下、さらに詳しく解説していきます。
雇用保険の保障内容
雇用保険は、勤め先の会社が加入する保険です。
保険料の徴収額は、毎月の給与額×税率(3/1,000)で算出され、会社との折半で支払う決まりです。
国民の失業を防ぎ、雇用のチャンスを拡大させ、生活を安定させることを目的としています。
学生や主婦などが、アルバイトやパートを解雇されてしまったとしても、家庭にお金をたくさん稼いでくる「一家の大黒柱」がいれば、さほど問題はないでしょう。
しかし、その大黒柱が失業してしまったら、家庭全体が危機に陥ってしまいます。
雇用保険に加入していれば、失業したとしても給付金を受けとる事で、家庭の経済的困窮を防ぐことができるのです。
また、雇用保険は、失業者の再就職を支援する役割も担っています。
仕事を探すためには、多くの時間、体力、費用が必要ですよね。
なかなか次の仕事が見つからなかったら、経済的のみならず、精神的にも消耗してしまいます。
希望の職に就くために資格が必要になることもあるでしょう。
資格取得のためにはさらに時間、体力、費用が必要となります。
これらを賄えるだけの貯蓄があれば問題ないですが、突如失業ということになると、「日々の生活で精一杯で先のことが考えられない」という状態にもなりかねません。
そんな苦しい時、国から経済的な援助があれば、不安に苛まれずに仕事を探すことができるでしょう。
「失業しても、経済的な援助を受けることができる」という事実そのものが、国民の心の支えになっているはずです。
このように「仕事」は国民が幸せな生活を営む上で不可欠な要素であるため、雇用保険は政府からの強制力を持つ制度となっています。
そのため、人を雇う以上、会社は必ず雇用保険に加入しなければならないのです。
参考:雇用保険制度 |厚生労働省
社会保険の保障内容
狭義の社会保険がカバーしているのは、以下の3つの保険です。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 介護保険
それぞれ保険の保障内容を解説していきます。
- 健康保険
会社と雇用されている人が、その収入額に伴う保険料を支払うことで、けがや病気などの際に医療費を減額したり、相応の手当を受け取ったりすることができます。
健康保険料の徴収額は、毎月の給与額×税率(約10%)※で算出され、会社との折半で支払う決まりです。
※全国健康保険協会の健康保険の場合、都道府県により税率は異なりますが、おおむね10%となっています。
- 厚生年金保険
会社に勤務する70歳未満の人と公務員が加入する、公的年金制度です。
厚生年金保険に加入=国民年金にも加入していることになるため、老後は「基礎年金」「厚生年金」をどちらも受けとることができます。
厚生年金保険料の徴収額は、毎月の給与×税率(18.3%)で算出され、会社との折半で支払う決まりです。
- 介護保険
要介護認定を受けた65歳以上の被保険者が、訪問介護、老人ホームの利用、ベッドや車いすのレンタルなどのサービスを受けることができます。
介護保険料は、40歳以上が負担し、健康保険料とともに納めるという規定があるため、
介護保険=「健康保険の一部」と捉えられる場合もあるようです。
介護保険料の徴収額は、毎月の給与×税率(1.8%)※で算出され、会社との折半で納められています。
※全国健康保険協会による介護保険の税率です
雇用保険・社会保険への加入条件
社会保険より雇用保険の方が厳しく加入を義務付けられており、雇用形態によっては、以下のように加入状況が異なる場合があります。
- 非正規社員・・・社会保険には入っていないが雇用保険には入っている
- 正社員・・・社会保険、雇用保険の両方に加入している
以下、詳しく加入条件を解説していきます。
雇用保険の加入条件
全ての労働者が雇用保険に加入するわけではありません。
以下の3つの条件を満たした人が雇用保険に加入することになっています。
週あたりの所定労働時間が20時間以上
アルバイトやパートタイマーはその限りではありませんが、現代の日本の正社員は、ほぼ全員が週に20時間以上働いているのではないでしょうか。
しかし、注意すべきは、1週間の「所定労働時間」が20時間以上であるという点です。
つまり、人員不足でたまたま20時間以上働いた週があったとしても、契約上の労働時間が週20時間未満であるならば、雇用保険に加入する義務は生じないということになります。
会社に勤め出してから31日以上勤続する見込みがある
こちらの要件は、正社員のみならず、短期、日雇い以外のアルバイトやパートタイマーも満たすことになるでしょう。
学生ではない(夜間部の学生は除く)
雇用保険法において、学校の昼間部の生徒は「労働者」として認められていません。
学生の本文は「学業」であるからです。
そのため、たとえ週20時間以上アルバイトをしていたとしても、雇用保険に加入することはできません。
しかし、卒業前に就職する、もしくは卒業後も継続して同じ会社で働く人には雇用保険が適用されます。
社会保険の加入条件
従来は、以下の2つのパターンの労働者が社会保険に加入することになっていました。
- 正社員、またはフルタイム従業員
- 週の所定労働時間と月の所定労働日数が、正社員の4分の3以上である非正規労働者
しかし、2016年10月の法改正により、「501人以上の従業員を抱える会社」では、以下で解説する4つの要件を満たした労働者に対して、社会保険が適用されることになりました。
今後はさらに適用範囲が拡大していく予定です。
週の所定労働時間が20時間以上
雇用保険の場合と同じく、週に20時間以上働く「契約」をしている人に社会保険は適用されます。
20時間の内に、残業した場合の労働時間は含まれません。
しかし、20時間以上働く契約をしていなくても、2か月間連続して週20時間以上働き、その後も週20時間以上働く見込みがある人は、3ヶ月目から社会保険に加入することになります。
契約よりも「実態」に重きが置かれているようです。
1年以上雇用される見込みがある
契約した期間が1年以下であっても、1年以上働く「見込み」がある人は社会保険に加入することになります。
※正社員、フルタイム従業員は、2か月以上働く見込みがあれば社会保険が適用されます。
1か月の給与が8.8万円以上
毎月8.8万円以上の給与をもらう人は、社会保険に加入することになります。
基本給以外の残業代やボーナス、休日手当など他の名目で支払われる給与は対象外です。
学生ではない
雇用保険の場合と同じく、昼間部の学生は対象外ですが、卒業前に就職する、もしくは卒業後も継続して同じ会社で働く人には社会保険が適用されます。
社会保険の適用範囲の拡大
今後、社会保険の適用範囲は拡大していきます。
拡大の範囲と適用される時期は以下の通りです。
- 2022年10月~
従業員が501人以上の会社→従業員が101人以上の会社
1年以上の雇用見込み→2か月以上の雇用見込み
- 2024年10月~
従業員が101人以上の会社→従業員が51人以上の会社
参考:厚生労働省・被用者保険の適用拡大について
雇用保険・社会保険に加入していなかったらどうなる?対処法も解説
雇用保険・社会保険に未加入であった場合、本来受給できる手当が受けられないなどの問題が発生します。
会社は、加入条件を満たした労働者を保険に加入させなければならないという義務がありますが、会社側の手違いや怠慢、不正によって未加入になってしまう危険性も無くはありません。
注意が必要です。
以下、雇用保険・社会保険に未加入だった場合に起こりうる問題と対処法について、詳しく解説していきます。
雇用保険に未加入だった場合
雇用保険に未加入だった場合、下記に示す「本来受給できたはずの手当」を受けることが出来なくなります。
- 育児休業給付
- 介護休業給付
- 失業手当
- 再就職手当
┗早い段階で安定した職に再就職できた際にもらえる手当 - 就業促進定着手当
┗再就職先でもらう給与の額が、前職より下がった場合にもらえる手当 - 就業手当
┗職を失った人がアルバイト・パートなどの雇用形態で就業した場合にもらえる手当 - 常用就職支度手当
┗障害があるなど、通常就職が困難とされる人が安定した職に就いた場合にもらえる手当
雇用保険に加入しているか確認する方法
上述の通り、雇用保険に加入していないと大きな不利益を被る危険性があるため、就業する際はしっかり確認しておく必要があります。
では、自分が雇用保険に加入しているか確認するためには、どうすれば良いのでしょうか。
まずは、自分の給与明細を確認してみて下さい。
雇用保険料は、会社が給料から天引きしているもの。
そのため、毎月の給与明細で雇用保険料が引かれていれば、雇用保険に加入しているはずです。
とはいえ、表面上、雇用保険に加入しているように見せかけているだけで、従業員から徴収した保険料をだまし取っている悪徳業者の存在も否定できません。
心配な人は、ハローワークに雇用保険加入の有無を問い合わせることをおすすめします。
雇用保険に未加入だった場合の対処法
雇用保険に未加入だったことが判明した場合、早急に加入手続きをとってもらうよう、勤め先に申告しましょう。
その上で過去にさかのぼって雇用保険料を支払うことで、各種手当を受給できる可能性は高まります。
もし、会社に申し出ても雇用保険に加入してもらえない場合は、大きな不利益を被る前にハローワークや弁護士に相談してください。
社会保険に未加入だった場合
社会保険に未加入だった場合、以下に示すような不利益を被ることになります。
3割払えば良かったはずの医療費の全額負担
老齢年金、障害年金を受給できない
介護保険サービス利用時の費用の全額負担
社会保険に未加入だった場合の確認方法
社会保険のうち、健康保険への加入の有無は、「会社から健康保険証が発行されているか」で判断できます。
厚生年金保険への加入の有無は、年に一回送られてくる「ねんきん定期便」で確認するか、年金事務所に年金手帳を持参の上、問い合わせをすることで判るはずです。
社会保険に未加入だった場合の対処法
会社が社会保険加入の手続きを忘れていたのであれば、会社側に申請すれば済みますが、中には、保険料の支払いを渋って、従業員を不当に社会保険に加入させない会社も存在します。
後者の場合、自分1人で解決するのは難しいため、全国健康保険協会支部、年金事務所に相談しつつ、弁護士の力を借りることも視野に入れておく必要があるでしょう。
まとめ
雇用保険と社会保険の違いや、加入条件、保障内容などを知ることで、納得した上で各種保険料を支払うことができるようになるはずです。
また今後、会社に勤める上で「保険の未加入」で不利益を被らないためにも、本記事の内容を理解しておくべきでしょう。