このページをまとめると・・・・
- 合同会社と株式会社の社会的認知度の違い
- 合同会社と株式会社の設立費用の違い
- 合同会社から株式会社に変更できるのか?
- 合同会社と株式会社で税務上の扱いは異なるのか
こんにちは、大阪会社設立代行税理士の佐藤です。
今回は「会社を設立しようと思うけど合同会社と株式会社のどちらかで悩んでいる」「合同会社と株式会社で税務上の扱いは異なるのか?」「合同会社から株式会社に組織変更したくなってきた」という人向けに書いてみました。しっかり読めば、株式会社と合同会社の違いが理解できるので会社を設立する際の参考になります。加えて、組織変更の可能性も探ることができます。
「株式会社か合同会社か」を選択する際の4つのポイント
会社設立にあたり、多くの起業家様からの相談を受けております。
起業家の皆様は、驚くほどに株式会社と合同会社の相違点等はよくご存じです。
それでも、「なにをポイントに選べばいいのですか?」等、最終的に決断するに至らない場合が殆どです。
このような起業家様に、安心して、会社の種類を選択して頂くため、私たちが行う最終アドバイスポイントは、殆どが下記4点に絞られてくるように感じております。
株式会社か合同会社かを選択する前には、色々な相違点に加えて、特に下記4点を是非ご参考にして頂けたらと思います。
Point1 社会的認知度
Point2 設立費用
Point3 設立後の社名変更
Point4 税務面・労務面
Point1 社会的認知度
近年、右肩上がりに設立件数が伸びている合同会社ですが、世の中にある会社のうち、圧倒的にメジャーなのは株式会社です。
長年、大阪で会社設立の代行を行っていますが、95%以上は株式会社だと思います。
誤解を恐れず言いますと、合同会社は、取引相手先によっては「合同会社ってどのような会社ですか?」「合同会社で大丈夫ですか?」等、会社の名称だけで会社の信用力に対して根拠のない疑問をもられてしまう可能性もあります。
また、会社経営者の肩書について、合同会社の経営者は「代表取締役」ではなく「代表社員」という肩書になりますので、「取締役ではないのですか?」等の質問を受ける可能性もあります。
合同会社の設立では、社会的認知度の面から、思ってもみない不利益を受ける可能性があるので、設立時にはこのデメリットも考えておく必要があると思います。
Point2 設立費用
電子認証定款の場合の会社設立に係る設立費用は、株式会社では約20万円、合同会社では約6万円かかります。
このため、設立費用を抑える点から考えると、圧倒的に合同会社の設立がお勧めです。
Point3 設立後の社名変更
設立後会社が軌道に乗ってから社名変更するという手段もあります。
実際、合同会社から株式会社への組織変更は法律上行えます。
ただ、合同会社から株式会社への変更にあたっては、実務上下記のデメリット等があります。
- 合同会社が解散し、新しく株式会社が新設されるという形式が採られるために、登記上、会社の継続性が切れてしまう。
- 税務上、労働・社会保険上、会社の名称変更の手続が必要となる。
- 銀行口座の名義変更手続が必要になる。
- 組織変更についての登録免許税等の費用がかかる。
- 社名変更に伴う印鑑・名刺・看板・ホームページ・書類等の変更や挨拶状の発送などかなりのコスト、労力がかかる等のデメリットがあります。
このようなデメリットを考えますと、安易に設立後に組織変更するから、設立時点ではとりあえず合同会社に決めるということは、あまりお勧めできません。
Point4 税務面・労務面
税務面では、株式会社と合同会社で取扱が異なるようなことはありません。
また、労働保険・社会保険等の労務面で、株式会社と合同会社で取扱が異なるようなことはありません。
従いまして、会社の種類を決定されるにあたっては、税務面・労務面のことを特段気にする必要はなく、安心して、いずれかの会社を選択して下さい。
会社設立にあたっての基礎知識
会社設立にあたって、お客様から、以下の事項のご質問を多く受けます。
・株式会社以外の会社の設立も可能ですか?
・そもそも株式会社以外の会社には、どのようなものがあるのですか?
・株式会社とその他の会社とは、何が違うのですか?
・株式会社と合同会社では、税金面等で違いがあるのですか?
・会社を設立するためには、どの程度の費用が必要なのですか?
これらのご質問にお答えするために、
- 「会社の種類」にはどのようなものがあるか。
’ - 「株式会社」と「合同会社」との大まかな相違点。
’ - 「株式会社」「合同会社」の設立に掛る費用。
について記載しました。一読していただけますと、ありがたいです。
1.会社の種類
現在、日本の会社には「株式会社」「合同会社」「合名会社」「合資会社」の4種類があります。
ただし、「合名会社」「合資会社」は、無限責任※1を負う出資者が必要であることから、現在、これらの会社を設立する人は殆どいないのが現状です。
したがいまして、ここでは、「株式会社」「合同会社」について、下記でその共通点と異なる点を簡単にご紹介いたします。
脚注
※1【出資者の無限責任と有限責任】
出資者の責任が無限責任であるということは、倒産した場合等、会社がその取引先(銀行、仕入先等)や従業員に対して会社財産を超える債務を負う場合には、出資者個人の財産も債務弁済に充てなければならないことを意味します。合名会社や合資会社では、このような責任を負う「無限責任社員」が必要となります。
他方、出資者の責任が有限責任であるということは、倒産した場合等、会社がその取引先や従業員に対して会社財産を超える債務がある場合でも、出資者は出資金を超える返済等は不要であることを意味します。株式会社や合同会社では、このような責任を負う「有限責任社員」のみで会社の設立が可能です。
2.「株式会社」「合同会社」の共通点
株式会社と合同会社では、以下のような共通点があります。
株式会社 | 合同会社 | POINT | |
①出資者 | 1人以上 | 1人以上 | どちらの会社も、出資者が1人いれば設立可能です。 |
②出資者責任 | 有限責任 | 有限責任 | 会社が倒産したときなどは、会社債権者等に対して会社財産を超える債務がある場合でも、出資者は出資金を超える返済等は不要です。 ’ただし、銀行から借入をする場合等では、通常、経営者の個人財産等を担保提供していることが多いため、このような場合には、担保提供している経営者の個人財産も差押えられます。 |
③出資金額 | 1円以上 | 1円以上 | 従来は、株式会社では、資本金(出資金)は1,000万円以上であることが必要だったのですが、現在では、1円以上の出資金で、設立が可能です。 |
④税務上の取扱 | 株税務上の取扱が異なることはありません。 | 税務面での取扱に、株式会社、合同会社で特段の違いはありません。 | |
⑤労務上の取扱 | 労務上の取扱が異なることはありません。 | 従業員を雇用する場合等、労働保険や社会保険上での取扱に、株式会社、合同会社で特段の違いはありません。 |
3.「株式会社」「合同会社」の異なる点
株式会社と合同会社では、下記のような異なる点があります。
株式会社 | 合同会社 | POINT | |
①出資者の名称 | 株主 | 社員 | 出資者のことを、株式会社では「株主」といい、合同会社では「社員」といいます。 ’これは名称の違いであり、実質的な出資者としての権利・義務等に違いはありません。 |
②経営者と出資者との関係 | 会社経営者は、出資者又は出資者以外でも可能。 | 会社経営者は、出資者でなければならない。 | 株式会社では、会社経営者は「出資者又は出資者以外」から決めることができます。 ’他方、合同会社では、会社経営者は「出資者」の中から決定しなければなりません。 ’ただし、設立時には多くの会社で、出資者が会社経営者となるため、実質的には、この違いは問題となりません。 |
③会社経営者の名称 | 代表取締役 | 代表社員 | 法律上、会社経営者のことを、株式会社では「代表取締役」といい、合同会社では「代表社員」といいます。 ’このために、合同会社の経営者である場合には、名刺等に「代表取締役」と記載することはできません。 ’ただし、「社長」「CEO」「常務」「専務」等は、法律用語ではありませんので、合同会社の経営者であっても、このような名称を名刺等に記載することは可能です。 ’合同会社の社長の場合、「代表社員 社長 ○○」と記載されている場合が多いです。 |
④社会的認知度 | 高い | 低い | 合同会社は、比較的新しく作られた会社種類ですので、社会的認知度は、株式会社に較べて、低くなります。 ’このために、企業を相手としたビジネスを行う場合等に不利に働くことがあります。 ’他方、一般消費者を相手とするビジネスでは、さほどの不利はないかもしれません。 |
4.「株式会社」「合同会社」の設立費用の比較
1)紙定款か電子定款かの違いによる設立費用の違い
会社設立に掛る費用につきましては、まず、定款を「紙で作成する」のか、「電子定款※1として作成する」のかにより定款に貼る印紙代(4万円)の違いがでます。
これは、定款をどのように作成するかの問題であり、株式会社であろうが、合同会社であろうが、同じ金額の違いが生じます。
2)株式会社か合同会社かの違いによる設立費用の違い
次に、株式会社の設立においては、定款を公証役場で認証※2してもらうことが必要となります。この「定款認証の手数料」として5万2千円が掛ります。
また、設立登記のために必要な「登録免許税」が15万円掛ります。
他方、合同会社については、定款の公証役場での認証は不要です。このため、株式会社のように公証役場での定款認証手数料が発生しません。
また、設立登記のために必要な「登録免許税」も6万円で済みます。
3)株式会社と合同会社の設立に係る費用
このことから、株式会社では設立にあたっては、最低20万円程度が必要となりますが、合同会社では6万円程度で設立が可能となります。
この設立費用の違いが、会社設立時における株式会社と合同会社の設立の大きな違いとも言えます。
(設立費用は、下記表をご覧ください。)
株式会社の設立費用 | ||
紙の定款の場合 | 電子定款の場合 | |
①公証人手数料 | 52,000円 | 52,000円 |
②定款印紙代 | 40,000円 | 0円 |
③登録免許税 | 150,000円 | 150,000円 |
合計 | 242,000円 | 202,000円 |
合同会社の設立費用 | ||
紙の定款の場合 | 電子認証定款の場合 | |
①公証人手数料 | 0円 | 0円 |
②定款印紙代 | 40,000円 | 0円 |
③登録免許税 | 60,000円 | 60,000円 |
合計 | 100,000円 | 60,000円 |
脚注
※1【電子定款】
定款の原本を電子文書で記録したものです。定款の原本を紙で作成した場合には、紙定款に4万円の印紙を貼る必要があるのですが、電子文書(電磁的記録)が定款の原本となりますので、印紙税が不要となります。
電子定款の場合、定款原本はCD‐Rに収納された電子文書になります。
ただ、公証役場で、定款謄本の取得が可能ですので、紙媒体の定款謄本も手元に保管可能です。
現在、印紙代金の節約のために、会社設立にあたっては、電子定款を作成するお客様がほとんどです。(なお、弊社のお客様は100%が電子定款を作成して設立を行っています。)
※2【公証役場での定款の認証】
株式会社の定款は、単に定款を作成したのみでは法律上有効な定款としては認められません。
公証役場での認証が完了して、法律上、定款としての効力が生じます。
このため、株式会社の設立においては、必ず定款の公証役場での認証が必要となります。