減価償却の原則規定と例外規定

原則規定

法人税法上では、「使用可能期間が1年以上」のもので、「取得価額が10万円以上」のものは、減価償却を行うことが原則として要求されます。

 

例外規定

法人税法上では、上記の「原則規定」以外に、「取得価額」や「会社の規模」を要件として、下記の2つの例外規定を設けています。

  1. 一括償却資産の特例
  2. 中小企業者等の少額減価償却資産の特例

以下で、この2つの例外規定をご紹介いたします。

 

 

一括資産償却資産

制度内容

取得価額が20万円未満の償却資産については、特例として3年で償却することができるものです。

 

要件

・会社の規模に関係なく、すべての会社で採用することができます。

・取得価額が20万円未満の償却資産であれば、採用することができます。

 

償却の特徴

1.3年で償却することができます。

◇取得価額が20万円未満で、法定耐用年数が5年の償却資産について◇

原則では、上記の償却資産は5年に分けて、取得価額を経費計上する必要があります。

「一括償却資産の特例」を採用した場合には、3年に分けて、取得価額を経費計上することができます。

すなわち、法定耐用年数が3年を超える資産については、当該特例を採用すれば、早期の経費化が可能となります。

 

2.月割計算ではなく、年割計算となります。

◇取得価額が20万円未満で、決算月に当該償却資産を購入した場合◇

原則では、上記の償却資産については、月割りで経費を計上する必要があります。すなわち、購入年度に経費化できる減価償却費の金額は、【「1年分の減価償却費」の1/12】の金額のみです。

「一括償却資産の特例」を採用した場合には、年割りで経費を計上することができます。すなわち、購入年度に経費化できる減価償却費の金額は、「1年分の減価償却費」全額となります。

期中に償却資産を購入した場合には、購入年度に経費化できる金額が、原則規定よりも多くなります。

 

3.3年間は、機械的に定額の償却がなされます。

◇一括償却資産の特例を採用した償却資産を、1年で処分した場合◇

原則では、償却資産を処分した場合に、「償却していない部分の取得価額」は、処分した年度に一括して経費化することができます。

他方、「一括償却資産の特例」を採用した償却資産については、例え1年で処分した場合であっても、上記のような経費化はできず、処分し資産がなくなった後であっても、2年目には「取得価額の1/3」を、3年目には「取得価額の1/3」を機械的に経費化する計算を継続して行う必要があります。

 

例示

・ 18万円の償却資産を12月に購入。
・会社の決算期は4月~3月。
・償却資産の法定耐用年数は6年、定額法による償却とします。

◆購入年度の減価償却費を「原則規定」で計算

18万円 ÷ 6年 × 4カ月/12カ月 = 1万円

◆購入年度の減価償却費を「一括償却資産の特例」で計算

 18万円 × 1/3 = 6万円

 

申告書での記載

「一括償却資産の特例」を採用した資産については、法人税申告書の「別表16(8)」に記載する必要があります。

別表16(8)

 

 

中小企業者等の少額減価償却資産の特例

制度内容

中小企業者等が、取得価額が30万円未満である償却資産を平成18年4月1日から平成28年3月31日までの間に取得して事業の用に供した場合には、一定の要件のもとに、その「取得価額の全額」を経費に計上することができます。

 

要件

この特例は、下記の「会社規模の要件」「償却資産の要件」を満たす場合のみに適用することができます。

要件①(会社規模の要件)

この特例は、中小事業者等に該当する場合のみ採用することができます。

中小事業者とは、以下のような会社をいいます。

1.「青色申告法人」であることが必要となります。

2.「資本金の額」の額が1億円以下の会社である必要があります。

脚注
※ただし、以下のような会社は特例を採用することができません。
・『「資本金の額」が1億円を超える会社(大規模会社)』に1/2以上の株式等を所有されている会社。
・2以上の大規模会社に2/3以上の株式等を所有されている会社。

 

要件②(償却資産の要件)
1.取得価額が30万円未満の償却資産について適用することができます。

2.少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円を超える場合には、300万円を限度として特例を適用することができます。

3.平成28年3月31日までに取得した資産のみが対象となります。
⇒この特例は、時限的な特例措置です。現在は、平成28年3月末までに取得したが対象とされています。当該時限は、今後延長される可能性があります。

 

償却の特徴

上記の要件をみたした場合には、償却資産の「取得価額の全額」を取得年度に経費計上することができます。

 

申告書での記載

「一括償却資産の特例」を採用した資産については、法人税申告書の「別表16(7)」に記載する必要があります。

別表16(7)

 

減価償却の特例

減価償却には、「一括償却資産の特例」「中小企業者等の少額減価償却資産の特例」の特例が存在します。

このため、固定資産の取得価額によっては、各種特例を選択することが可能となります。

以下では、固定資産の取得価額別に、どのような規定が選択可能かをご説明いたします。

 

 

 

中小企業者等の場合

選択可能の規定

   10万円未満  10万円以上
20万円未満
 20万円以上
30万円未満
30万円以上
経費処理 × × ×
少額資産の特例
(全額経費計上)
×
一括償却資産
(3年償却)
× ×
原則的償却  ○※1

※1:10万円未満の資産についても、購入時に資産計上し、減価償却により経費化することができます。
※2:すべての場合で、資産計上した償却資産について、減価償却を行わないことができます。

 

中小企業者等とは

中小企業者等とは、以下のような会社です。

1.「青色申告法人」であることが必要となります。2.「資本金の額」の額が1億円以下の会社である必要があります。

脚注
※ただし、以下のような会社は特例を採用することができません。
・『「資本金の額」が1億円を超える会社(大規模会社)』に1/2以上の株式等を所有されている会社。
・2以上の大規模会社に2/3以上の株式等を所有されている会社。

 

 

中小企業者以外の会社の場合

   10万円未満  10万円以上
20万円未満
 20万円以上
経費処理 × ×
一括償却資産
(3年償却)
×
原則的償却  ○※1

※1:10万円未満の資産についても、購入時に資産計上し、減価償却により経費化することができます。
※2:すべての場合で、資産計上した償却資産について、減価償却を行わないことができます。