消費税の基本的仕組み

消費税の負担者

消費税は、事業者が税務署に納付するために、事業者の立場で考えると御自身が消費税を負担していると思ってしまいがちです。
この考え方は、税務署からすると大きな間違いだ!ということになります。
消費税は、物品・サービスを消費する消費者が国等に支払う税金であるため、消費税を負担しているのは消費者です。
消費税法上、事業者は、消費者が負担し支払った消費税を一旦預かり、自らが消費者として支払った消費税との差額を税務署に納付する役割を課せられているだけです。

この点、法人税や住民税については、主として事業者が獲得した利益・所得に対して、事業者に税負担が課せられるものです。このため、消費税と法人税等とはその性格が大きくことなるものであると言えます。

 

消費税の納付義務

事業主には、消費税の負担義務はありませんが、納付義務はあります。このため、本来消費税を付加して販売しなければならないにもかかわらず、消費税を付加して販売しなかった場合には、その部分についての負担は事業主にかかってきます。

他方、事業主が免税事業者である場合等で、得意先に対して消費税を付加して販売した場合でも、この消費税部分は税務署に納付する必要がないため、最終的に事業主の利益となります。

消費税法において、事業主の役割は、「徴収者である国」と「納税者である消費者」の間に介在する存在です。
消費者は国等に納付すべき税金を事業主に支払い、国等は消費者が支払ったであろう税金を事業主から徴収します。

 

消費税の課税対象取引

消費税は、すべての取引を対象として課せられるものではありません。

消費税が課税される取引は、
「国内において事業者が事業として対価を得て行われる取引」を対象として課税されます。

 

免税事業者となる会社

以下の場合には、消費税申告書の申告及び納付義務が免除されます。

1、売上規模が小規模な会社

①前々事業年度の課税売上高が1,000万円以下で
かつ
②前事業年度の前半6カ月間(上半期)の課税売上高又は給与等支払額が1,000万円以下の場合


2、資本金1,000万円未満の会社で、会社設立後の1期目及び2期目

会社を新規設立した場合には、設立後の1期目及び2期目(※)は、消費税が免税となります。
(この場合には、1期目、2期目の売上高が1,000万円を超えている場合でも免税となります。)
(ただし、資本金が1,000万円以上の会社は、設立後の1期目、2期目でも消費税の納税義務があります。)

※2期目には、課税事業者になる場合があります。

 

免税事業者の規定がある理由

1、売上規模が小規模な会社

本来、消費税は売上高の多寡に関わらず徴収されるものです。
ただ、規模の小さな事業者に消費税申告書を作成させることは、その事業者の消費税計算のための事務負担を増大させることになります。
このため、売上規模が小さい事業者は、特別に、消費税を納付する義務を免除する規定を設けています。

2、資本金1,000万円未満の会社で、会社設立後の1期目及び2期目(※)の会社

会社設立後の会社には、基準期間というものがないため、売上高の多寡に関わらず消費税を納付する義務を免除する規定を設けています。(また、設立直後の会社は通常小規模な会社であるとの想定から、上記1の会社と同様の理由で、消費税の納税義務を免除しています。)
ただし、資本金が1,000万円以上の会社は、小規模な会社とは考えられないため、免税事業者となれません。

※2期目には、課税事業者になる場合があります。
1期目の「開始日から6カ月間」の売上高及び人件費が1,000万円を超える場合には、2期目は免税事業者にはなりません。(上記1②の規定により課税事業者となるためです。)

 

売上規模が小規模な免税事業者の要件解説

【要件】
前々事業年度の課税売上高が1,000万円以下かつ
前事業年度の前半6カ月間(上半期)の課税売上高又は給与等支払額が1,000万円以下

①課税売上高
・免税事業者であった期間については、消費税の課税関係はありませんので、売上高のなかには消費税が含まれていないものとして、売上高そのままの金額が課税売上高となります。

・課税事業者の期間については、税抜きの売上高で判断します。

・この売上高は、課税売上高を言います。
課税売上高とは、通常の売上高から海外輸出売上高等を控除したものです。
このため、海外輸出等がない場合には、通常、売上高とほぼ一致します。

②「基準期間」、「特定期間」
・消費税は、ある年度の売上高が1,000万円を超えると直ちにその年度に消費税を納付しなければならないというものではありません。
・消費税の申告書を作成するためには、それに向けた日々の会計帳簿への記帳が必要となります。
・消費税法では、売上高が1,000万円を超えた事業年度からある程度の準備期間を設けて、消費税の納付義務を課すように以下の制度を設計しています。
・このための制度が、「基準期間」及び「特定期間」というものです。消費税法上では、1,000万円を超えるか否かの判断基準となる事業年度(期間)を「基準期間」「特定期間」と名付けています。

(1,000万円を超えるか否かの判断対象となる年度)
基準期間
年間売上高が1,000万円を超えるような場合には、その年度の次々年度から、消費税の納付義務が発生します。この1,000万円を超えるか否かの判断対象となる事業年度を「基準期間」という名称を付けています。
特定期間
「事業年度開始から6カ月間(上半期)」(※)の売上高及び給与等支払額が1,000万円を超えるような場合には、その年度の次年度から、消費税の納付義務が発生します。この1,000万円を超えるか否かの判断対象となる期間を「特定期間」という名称を付けています。

※:1期目の事業年度が、7カ月以下の場合には、この事業年度は「短期事業年度」となります。
「短期事業年度」となると、その年度には「特定期間」がないことになります。
従いまして、1期目の事業年度が7カ月以下の場合には、1期目自体に「特定期間」が存在しないことになります。

 

 資本金1,000万円未満の会社で、会社設立後の1期目及び2期目の会社の免税要件解説

【要件】
資本金1,000万円未満である
会社設立後の1期目及び2期目の会社

・会社の資本金が1,000万円未満であることが大前提となります。
(資本金額が1,000万円以上である場合には、1期目から課税事業者になります。)

・資本金が1,000万円未満である場合には、1期目は免税事業者となります。

・資本金が1,000万円未満であっても
1期目の「事業年度開始日から6カ月間」の売上高及び給与等支払額が1,000万円を超える場合には、2期目 には課税事業者になります。
(売上規模が小規模な会社の免税事業者の要件から外れてしまいます。)

・資本金が1,000万円未満で、上記6カ月間の売上高及び給与等支払額が1,000万円以下の場合には、2期目も免税事業者となります。

 

免税事業者の規定

消費税法では、以下の場合には免税事業者となることができます。

①「前々事業年度の課税売上高が1,000万円以下」かつ「前事業年度の前半6カ月間(上半期)の課税売上高又は給与等支払額が1,000万円以下の場合」

②資本金1,000万円未満の会社で、会社設立後の1期目及び2期目
(ただし、2期目は1期目の上半期売上高・人件費の金額により、課税事業者となることがあります。)

 

課税事業者となる場合(免税事業者の例外)

①の条件については、条件を満たす場合には、免税事業者となります。
②の条件については、条件を満たしていても、下記の場合には免税事業者となれず、課税事業者となってしまいます。(新規事業を行った場合には、免税事業者となれる要件の例外が規定されています。)

 

個人事業者の免税規定の例外

1、相続があった場合の例外規定

相続により事業が継承された場合には、
法律上、「相続を行った人が営んでいた事業」と「相続を受けた人が営む事業」は別のものとして扱われます。
ただ、消費税法上は、両社の実質的同一性を認めて、「相続を行った人が営んでいた事業」と「相続を受けた人が営む事業」を同一視して消費税を課す規定が設けられています。

①相続があった年

相続があった年度の前々年度(基準期間)における「相続を受けた人が行っていた事業」と「相続をした人が行っていた事業」のいずれかの課税売上高が1,000万円超の事業を承継したとき
⇒「相続のあった日の翌日」から「その年度の12月31日」までの期間について、課税事業者として取り扱わ。

②基準期間の課税売上高の合算

・相続があった年度の課税売上高について、「相続を受けた事業」と「相続を受けた人がもともと行っている事業」のそれぞれの課税売上高が1,000万円以下である場合であっても
・「相続を受けた人がもともと行っていたの基準期間における課税売上高」と「相続を受けた事業」の基準期間における課税売上高の合計額が1,000万円を超える場合
⇒相続を受けた人は、課税事業者として取り扱われます。

③複数事業場を分割して相続した場合

複数の事業場を有する被相続人の事業の一部を、複数の相続人が事業場ごとに分割して承継した場合、その相続人の消費税の納税義務が免除されるかどうかは、相続した事業場に係る被相続人の基準期間における課税売上高と、相続人の基準期間における課税売上高を合算したところで判定します。

5、未分割の場合

各相続人のその年の消費税の納税義務が免除されるかどうかは、被相続人のその年の基準期間における課税売上高に各相続人の相続分に応じた割合を乗じた金額と、各相続人の本来の基準期間における課税売上高を合算したところで判定します。

 

 

個人事業者から法人となった場合の免税規定

問題となる事項

個人事業者から法人となった場合には、法人事業の1期目、2期目は免税事業者となれるか否かが問題となります。
例えば、個人事業の1期目の課税売上高が1,000万円を超える場合、個人事業のままであると3期目には、課税事業者となります。
このような会社が2期目終了時点で法人化した場合には、「法人事業の1期目の前々年度」が「個人事業として存在し、かつその事業年度の課税売上高が1,000万円を超える」ことになります。
このような場合には、法人事業の1期目、2期目は免税事業者となれるか?が問題となります。

 

結論

この点につきましては、「法人税通達:1-4-6」に下記の規定があるため、法人事業の1期目、2期目は免税事業者になることができます。

 

規定:法人税通達1-4-6

個人事業者が法人成りにより新たに設立された法人については、
個人事業者の基準期間における課税売上高又は特定期間における課税売上高は、
新規設立された法人の基準期間における課税売上高又は特定期間における課税売上高とはなりません。

 

解説

個人事業者があらたに新規に法人を設立した場合には、個人事業者であった時代に課税事業者であっても、
新規法人については、個人事業者時代の課税売上高に関係なく、
「 資本金が1,000万円未満かつ会社設立後の1期目及び2期目の会社の免税要件」をクリアすれば、設立後の1期目、2期目に免税事業者となれます。
(個人事業と法人事業は、全く別のものとして考えることができます。)