この記事を要約すると・・・・
- 初心患者への丁寧な説明をしていますか?
- 歯科医院の経費の妥当性について
- 医療法人の設立について
- 人材募集の方法
- スタッフの懲戒解雇の方法
こんにちは、歯科医院と介護事業を中心とした税理士の佐藤です。
今回は「再来率をアップさせたいな」「プライベートな経費と院の経費がごちゃ混ぜになってる」「スタッフのことで悩んでいる」「辞めさせたい助手がいるんだよなあ」という歯科医院の先生向けに書いてみました。しっかり読めば歯科医院の安定につながります。院内のスタッフの気持ちの安定が経営において一番大事なことですから。
増患対策は初診患者への説明からスタートする
<増患対策は初診患者への説明からスタートする>
歯科医院を選ぶ情報源の70%以上が口コミです。 口コミは既存患者からしか生まれません。 つまり、既存患者の満足度を高めることは増患対策の最重要ポイントでもあります。 その中でも、初診患者への治療内容の説明をうまく利用することが大事です。 ①初診日にまずパノラマレントゲンを撮影し、 患者さんに口腔内の状態を実際に見てもらいます。 ②これを踏まえて、今後の治療方針を先生が伝えます。 ③先生の方針に対しての患者様の意見を聞きます。 ④双方納得の上で治療に入ります。 「たったこれだけのことか」と思われるかもしれません。 「そんなのうちはずっと前からやってるよ」と言われるかもしれません。 しかし、現場で実際に話を聞いたりすると ③が抜けていたり、①を忘れたりするケースも多々ありました。 患者満足度=口コミ効果=増患対策という意識は 経営者としては常に意識されるべきポイントです。 ただ、説明が長引けば長引く程、患者数の限界が生じ待ち時間を延ばすことにもなります。 それでも通い詰めてくれる患者様はいるでしょう。 治療時間の長さと丁寧な説明は相反するもののようにも思えます。 しかし、これは院内の連携プレーである程度は解消できます。 例えば①の説明を先生以外のスタッフが行う、③の意見聴取を先生以外が行う等、 院内のコミュニケーションが蜜であればあるほど、このあたりに柔軟性が生まれます。 患者様とのコミュニケーションと同じぐらい院内コミュニケーションも大事だということが 分かりますね。
歯科医院における会計処理の注意点:家事関連費
<歯科医院における会計処理の注意点:家事関連費>
確定申告の際の会計処理で先生の大きなテーマの一つになるのが家事関連費。 事業に必要な経費(事業経費)か生活費(家事費)かの区別ですね。 これが税務調査では大きな問題になります。 家事関連費とは、事業経費と生活費が混在しているようなケースの費用をいいます。 例えば車のガソリン代。一部を通勤に使って一部をプライベートで使っているような場合、 そのガソリン代が事業経費か家事費かは混じっていて分かりませんね。 ではこういう場合はどうするのでしょうか? ①家事関連費のうち、主部分が事業遂行上必要なものであり、かつ、明らかに区分できる場合、 事業用部分について必要経費することが可能です。 (主たる部分が医院経営上必要かどうか) ②青色申告者で、帳簿書類等で、事業遂行上直接必要であったことが明らかにされていれば、 家事関連費のうち当該事業用部分を必要経費として計上可能です。。 (両者を区分できるかどうか) 区分方法として、例えば上記のガソリン代であれば、プライベート用の走行距離が分かれば 自ずと事業用の走行距離も分かりますね。これで明確に区別できたと言えるわけです。 意外かもしれませんか、結構適当です。
医療法人設立によって変わること
<医療法人設立によって変わること>
私たちは歯科医院向けに税理士業務を展開しているせいかい、医療法人設立の話もかなり多いです。 医療法人の設立にも当然ならがメリット・デメリットがあります。 改正医療法により設立することとなった基金拠出型医療法人について見ていきます。 <基金拠出型医療法人> 改正前と基金の取扱いが異なります。 このことが大きな障害となり、医療法人の設立に後ろ向きとなる方もいらっしゃるようです。 <基金の取扱いについて> 返還請求できるのは拠出額のみ。つまりいくら利益がプールされても相続税の評価は 増えないので、事業承継や相続が容易になりました。 <利益(残余財産)の取扱いについて> <医療法人にプールされるため以降の事業展開に費やせます。しかし配当はできません。 また、解散時の残余財産は国等に帰属するので先生に戻ってくることはありません。 <税率について> 個人では最大50%の所得税課税がありますが、法人は40%以下になります。 但し赤字でも均等割分の税金の支払いが発生します。 <親族への給与> 理事になれば家族にも自由に報酬を支払うことができます(但し社会通念上の範囲で)。 <院長自らの給与> 個人事業主時代とはことなり給与所得控除というメリットを受けることができます。 <退職金> 理事退任時に役員退職金の支払いが可能になり損金算入可能です(社会通念上の範囲で)。 個人の場合は小規模企業共済や民間の生命保険によるしかないが節税対策としては弱いです。 ちなみに法人であれば生命保険により税金対策が有効活用できます。 <社会保険について> 院長も社会保険加入が可能になります。厚生年金への強制加入と相まって負担額は増加します。 ただし見合いの給付額も増えます。 <分院について> 法人であれば、分院の開設や介護老人保健施設の設置が可能になります。 但し、分院の管理者(常勤医師)は理事に就任しなければなりません。 <決算日について> 法人であれば個人と違って決算日の選択が可能になります。 <社会保険収入について> 法人の場合は、社会保険診療報酬支払基金から入金される診療報酬は源泉徴収控除前です。 個人医院の場合は、確定申告後に還付されますが事務手続は煩雑です。
人材募集の基本手法について
<人材募集の基本手法について>
歯科衛生士や歯科助手の採用に当たっては慎重に行う必要があります。 なぜなら日本の法律上は一旦雇用した人材を解雇するのは非常に難しいからです。 <求人方法> ○新卒:歯科衛生士専門学校への求人依頼(新卒採用) ○中途:職業安定所、新聞、歯科専門誌、衛生士会、人材関連の業者、知人 等 <雇用条件の設定> ○就業規則は従業員10名以上で法的にも必要になります。 ○賃金算定方法、賃金支払方法、賃金支払時期、賞与基準、各種手当(残業、住宅、通勤等) ○労働時間(週40時間以内)、始業・終業時間、休日・休暇 <募集について> たくさんの応募を求めて、年齢制限や学歴制限を行わない歯科医院様がほとんどです。 しかし、弊社の経験則では条件を徹底的に絞ることをお勧めします。 「主婦募集」ではなく「大卒の主婦」や「子育て経験のある主婦」等です。 ターゲット数は減少しますが、「単なる主婦」では募集してこないプライドのある 使える人材が募集してくれる可能性がグンと高まるからです。 できれば人手不足になる前に、 <面接について> ○基本的には院長自ら面接すべきです。 ○必要書類(履歴書、健康診断書、資格証明書、住民票等)を事前に応募者に伝えます。 ○人物総合評価は勿論大事ですが、それ以上に医院の価値観に合う人材かどうかを見極めます。 皿には対人能力、専門知識の有無等も重要になります。 ○より多くの言葉を応募者に発してもらい、うまく聞き役になります。 <参考> 日本は基本的に労働者が手厚く保護されている国です。 社会保険労務士を使って、就業規則やセクハラ規程や退職金規程を策定しても ユニオン等に訴えられれば、医院は無傷というわけにもいきません。 とはいえ、雇用段階でスタッフの人となりを完全に把握するのもまず不可能でしょう。 雇用するということはリスクを伴うということになるのです。 先生は経営者として、この点を理解しておくべきと思われます。
スタッフを懲戒解雇するのは簡単か?
<スタッフを懲戒解雇するのは簡単か?>
一旦採用した人を懲戒解雇するさせるのは簡単ではありません。 <就業規則を作成しておくこと> まずは就業規則の中の懲戒解雇事由に当たる行為が存在したことが大前提になります。 <労働基準監督署への提出> 解雇するのに正当な理由(業務上の横領等)があれば、解雇予告除外認定申請を、 労働基準監督署に提出します。これが認められれば懲戒解雇は可能になります。 しかしながら、除外認定は、悪質・重大な事由に限られます。 たとえ就業規則の解雇事由に該当していても労働基準監督署が認定しなければダメです。 <解雇はできないと思っておいてもいい> 解雇不能なケースもよくあります。まずは行動を注意する等しそれを記録に残します。 <そもそもですが・・・解雇について> ①整理解雇 経営危機や事業所閉鎖などの経営規模縮小に伴う人員整理による解雇 ②懲戒解雇 重大な服務規律違反(経歴詐称等)や犯罪行為(横領等)により、秩序を乱した 場合の解雇。労働基準監督署に解雇予告除外認定申請を行ない、承認されれば、 解雇予告なし・解雇予告手当なしで即日解雇できます。 ③普通解雇 ①②以外の解雇。 後々、不当解雇と異議申し立てを食らわないように丁寧な処理が必要です。 まずは解雇対象者の納得が必要です。 話し合いで、自己都合退職扱いにできればベターです。 労働基準法にも「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当である と認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」とあります。 つまり、労働者の過剰なまでの保護の結果、院長は解雇はおろら、減給や降格も 簡単にはできないということを念頭に置かれるべきです。 ちなみに解雇予告は、解雇日の30日前に意思表示しなければなりません。 口頭でも法律上はOKですが後々を考えて、文書として交わすべきです。